運用実行前のアセスメントや移行も“運用の一部”として捉える
それでは実際にどのような流れで、ハイブリッドIT環境のシステム運用を最適化していくのか。梅根氏は「運用実行前のアセスメントや移行も、ハイブリッドIT環境の運用の一部」と語る。そしてそれぞれにマイクロフォーカスでは対応するソリューションが用意されているという。
まず「収集」のフェーズでは「構成の把握」が目的となる。UD(Universal Discovery)/ UCMDB(Universal CMDB)を活用し、インフラやミドルウェア、その上で動いている業務などを、telnetのような既存のプロトコルで自動的に情報収集し、マッピングしていく。例えば、仮想環境であれば、物理ホストとゲストOS、Vスイッチの関係性などが相当する。また「業務」はユーザー固有のものになることが多く、業務サーバーからExcelやCSVなどで情報を引き抜き、ミドルウェア以下のものにマッピングさせていくという。
「ざっくり言えば、シートに分かれたExcelのような二次元で管理できないデータ群を、トポロジのような形で管理することで関係性を出すというのがポイントになります。そのマッピングによってどの業務がどのインフラやミドルウェアと関係しているのかが明らかになり、移行の難易度が大体わかるというわけです」(梅根氏)
近年の移行先としてはパブリッククラウドが多いが、AzureもAWS、Googleもそれぞれ仕様が異なり、業務内容や使用期間などでも用途が異なる。そこで次に収集した情報を「Cloud Assessment」で分析する。サーベイや移行ステータスから得た情報を集約し、クラウドに置きやすいもの、置きにくいもの、置いた方がいいものといった要件に応じて評価するというわけだ。その上で大まかなスケジュールとして提案する。
その次の「計画」フェーズのポイントとなるのが「移行の難易度と順番」だ。「PlateSpin」でサーバーやアプリケーションの依存関係をもとに移行のためのプランを立て、プロジェクトごとに進捗を管理し、移行に向けたタイムラインの策定を行う。実際の「移行」フェーズでは、物理サーバー、仮想環境、パブリッククラウドの三者の間で、データをバックアップ、コピーし、差分移行を行う。計画段階の機能と照らし合わせながら移行し、「PlateSpin」などの移行ツールを使えば失敗した場合は切り戻し対応も可能だ。
そして、システム移行前後には、「LoadRunner」や「Diagnostic」「SiteScope」などによるGUIに関する機能検証や回帰テストの自動化も欠かせない。たとえば、エンドユーザーが行う画面操作を自動で記録し、そのシナリオが適切かどうかを判断したり、スクリプトとしてアプリケーションを自動操作して本当に問題なく実施できたかを確認したりする。さらに負荷についても移行前後でテストを実行し、前後で異なるのか、現在負荷がかかる場所はどこかなどを可視化するというわけだ。
そして、実際の「運用」のフェーズでは、監視基盤の構築がカギになる。従来からインフラ監視は定番の施策だが、ネットワークやサーバーから見た状況がユーザーの実感値と異なることも少なくない。そこを補完するためにユーザー視点での監視が求められるが、監視は容易でも原因究明は困難だ。そこで「Operations Bridge」ではデータ収集時に把握したシステム構成のトポロジを利用して、ユーザー視点で問題があれば、ドリルダウンして原因を究明する。近年では、モバイルアプリの監視もユーザー視点で行なうことが増えているという。
しかし、こうした監視基盤もシステム構成の変化にキャッチアップできなくては意味がない。そこで、パブリッククラウドなら用意されているAPIとの連携や、監視ツールなどからの情報取得により、長期的・短期的な変化を把握する。しかし、こうしたツールから情報を取得することは容易でも、それを統合しマッピングすることが難しい。そこで、仮想環境であれば物理&仮想ホストの関係などが地図としてあらかじめ用意されるので、そこに収集した情報をマッピングするというわけだ。ミドルウェア以下は自動化にて、そして組織ごと独自性の高い「業務」のみを手作りで対応させていく。