データ利活用を中心とした戦略を展開
スマートフォンをはじめとして通信機能がついた機器が日常に定着し、データの利活用の幅は広がり続けている。あらゆる種類のデジタルデータが行き交うことになり、処理しなくてはならないデータ量も増える。また、改正個人情報保護法などデータの扱いに関する法整備への配慮も必要に。データの利活用をするなら、おのずとこうした課題に直面することになる。
NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 庄司哲也氏はNTTコミュニケーションズを含むNTTグループが取り組んでいるデータ利活用の事例として、札幌市ICT活用プラットフォームを挙げた。ここでは、携帯基地局の位置情報や商業施設の購買情報、公共交通機関の運行情報など企業をまたいだ多様なデータを収集し、プラットフォームを通じて地域産業の活性化、旅行客の利便性向上、地域課題の解決などにつなげている。こうした取り組みを通じて、庄司氏は「NTTコミュニケーションズではデジタルトランスフォーメーションの信頼おけるパートナーとしてケイパビリティの強化と拡充に務めていきます」と話す。
具体的な取り組みはデータの収集、蓄積、分析の3つの場面に分けることができる。
データ収集:eSIM、不正通信対策、OTとIT環境のセキュリティ
データ収集に取り組む背景には、IoTデバイスの増加がある。全世界のIoTデバイス数は2013年の112億から2018年には225億となり、この5年間でおよそ倍に成長(2016年までは実績値で2017年からは予測値)。庄司氏は同社の取り組みとして、IoTデバイスの種類や位置に応じた適切なセキュリティ対策と大容量データの効率的な伝送を掲げた。
データ収集プロセスにおけるIoTセキュリティ対策は3点ある。デバイスではeSIM、ネットワークでは不正通信対策、加えてOT(Operational Technology:工場などにおける運用または制御技術)とITの統合的なセキュリティ対策だ。
デバイスのeSIMとは組み込み型のSIM。遠隔から通信プロファイルを書き換えられる利点があり、今後IoT機器で普及が見込まれる。NTTコミュニケーションズは大日本印刷と暗号化通信などセキュリティ機能を実装したeSIMの共同開発を進めている。
ネットワーク通信では不正な通信を素早く遮断するようにする。これにはIoTデバイスからの正常な通信を学習することで、マルウェア感染や乗っ取りなど異常な通信をすばやく検知できるようにする。いつもと異なる通信なら遮断してしまうということだ。
加えてOTとIT環境におけるセキュリティ対策。かつては工場などのOTは、ITと隔離されていたが、昨今では両者の環境は接続するようになってきている。もしOT環境で何らかの障害が起きれば生産停止など業務に多大な悪影響が及ぶリスクがある。そこで2017年9月からNTTセキュリティは産業制御システム向けセキュリティサービス「IT/OT統合セキュリティサービス」を提供開始しており、ここにNTTコミュニケーションズの技術やサービスも盛り込まれている。このサービスではセキュリティのアセスメント、セキュリティ機器導入、セキュリティモニタリングなどを行う。
通信環境と関連し、庄司氏はアジアと北米をつなげる海底ケーブル「JUPITER」の敷設開始についても言及。NTTコミュニケーションズが保有する既存の国際海底ケーブルと組み合わせると3ルートの冗長化を実現し、最先端のファイバーや設計技術で400Gbpsの光波長多重伝送方式に対応する。2017年10月にNTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、Facebook、Amazonなどが建設保守協定に調印した。