
第1回、第2回では、「ITを活用した経営が企業競争力に大きな影響が出る時代であること」、「ICT(情報通信技術)人材の需要増加に対し、国内人材だけでは必要な人材を賄えないこと」、そして「エンジニアを採用できなければ、社員は既存システムの継続/保守に追われ新規企画に手が回らず悪循環に陥る懸念があること」を考えてきた。第3回となる今回は、オフショア開発を取り巻く背景と上手くいかない状況を打破する策についてお伝えしたい。
IT化の進行を阻む2つの障壁と解決策
近年オフショア開発を検討する企業に、まず第一に立ちはだかる課題は、“やりたいことはたくさんある”、が、“社内にIT人材がいない、でも外注先はコストが高い”、“ならば、内製化しよう”となるが、“技術者が採用できない”。そして、“そもそも要件をまとめる人もいない”ということに気付くパターン。
第二の課題は、オフショア開発の一般的な注意点としてあげられる、“コミュニケーション(地理、言語、文化)”などによる、“オーバーヘッドコスト”や現地開発体制などの“スキル”、そして“品質”、“納期”などへの対応だ。このような点を考慮しながら上手にオフショアを活用するノウハウが自社内に必要になる。
そこで有効なアプローチとして参考になるのがインソーシング志向アウトソーシングである。
上記の言葉を初めて聞くという方もいるだろう。一言で言うと、欧米企業が、国内自社IT部員と国外のインド等のオフショアで実現している「グローバル開発体制」に、近づけるための手法である。つまり、保守や開発、コーディングなどをアウトソーシングすることで、手つかずの課題整理や戦略立案、企画などに社員の業務をシフトするということである。
当社のラボ型開発を例に、その活用方法を説明したい。まず①採用面で若く優秀な技術者の確保、次に、②現地でのタスク管理など、自社では難しい部分を任せられるようになる。そして、③システム、業務などの理解が深まっていき、自社技術者と同様に育成することが可能になる。④アウトソースすることで手つかずだった課題や企画を自社IT部門人員に任せられ「企画者」「プロジェクトマネージャー」への引き上げを行うことができる。
フェーズ毎に区切って図式化すると以下の図のようになる。

上図の中で重要になるのが、「弊社[JP-SE]」と記載のあるエンジニアの存在である。ポイントは、“日本法人側のエンジニアが、オフショア活用のアセスメントや、上流工程支援を行うことで、国内ベンダーに丸投げしていたシステムをオフショアへ移行”することを支援する役割を担っている。(後術の“ハイブリッド開発”を参照)
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今井 徹(イマイ トオル)
株式会社コウェル 経営戦略室 室長。20代で株式会社アライドテレシスにてLAN/WAN製品の営業、マーケティングに従事。その後、複数社の国内ステルスモードのスタートアップベンチャーでマーケティングを担当。 その後ビットアイル(現エクイニクス・ジャパン)のグループ企業で、マーケティング、BO部門、ビッ...
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