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オフショア開発の今

オフショア委託先選定のポイントは何?日本市場に最適な事業形態とは?企業規模や展開別にアウトソース選定指針を解説

 前回、オフショア開発で予測される課題や開発で頻発する品質低下を回避する方法、テスト体制の構築の重要性について解説した。最終回となる今回はこれまでのまとめとその次のフェーズとして「最適なアウトソース先の選定指針」「日本における今後のグローバル開発の在り方」と「今後のベトナムのオフショア開発について」をお伝えしたい。

オフショア開発企業の分類と選定方法

 まず、最適なアウトソース先の選定の指針としてソフトウェア開発企業をタイプ別に分類したい。現在、ベトナムにあるソフトウェア開発企業を資本系列やターゲット市場で分類すると以下の表のようになる。

資本系列

事業ドメイン

具体例

ベトナム資本企業

 

グローバル展開企業

<主要市場は欧米。日本市場にも参入>
・従業員がグローバルで1,000~数万名規模。
・企業数は数社であるが、ベトナム国内はもちろんのこと、欧米にも販路を持ち、日本法人も設置する大手企業。
・日本での顧客層は大手SIer、上場企業の大手企業が中心。

 

日本市場特化企業

<主要市場は日本>
・近年急増中の日本への留学後に日系企業で勤務したエンジニアが起業したケース。
・経営者が日本語や日本市場に精通し、顧客は日本企業がメイン。従業員規模は10~50名規模が多く日本法人が無い場合も多い。

 

・ベトナム市場特化型
・技術特化型

・10~100名規模の企業が多数。創業者はベトナム人で日本への留学経験、日系企業での就業経験は無く、主要顧客はベトナム国内企業。
・VRやAIなどに特化し、グローバル志向が強いスタートアップ企業も出現。

外国資本企業

日本資本

自社開発子会社

・自社の情報システム部門/開発部門の海外拠点。
・自社系列の開発業務に特化している企業と、自社系列以外の外販にも取り組むタイプに分かれる。

 

アウトソース事業主体

<主要市場は日本>
A)従業員100名超の企業と100名未満の規模に大別される
・企業がSIerを通さずに直接発注するケースが急増。
・顧客層は当初はベンチャー企業が中心だったが、近年は上場企業など大手企業が増加中。
・当初はWebサイトやLP制作、モバイルアプリ、ゲームなどの開発が多かったが、近年は業務システム、大型のWebシステム、xR分野などへ開発領域が拡大している。

<主要市場は日本>
B)大手SIerの海外開発拠点
・中国に次ぐ海外開発拠点の位置づけが多い。
・大型の開発・長期のプロジェクトが主である。

欧米資本

自社開発子会社

・欧米系大手メーカーの自社開発&研究拠点。工場併設も多い。

 

④アウトソース事業主体

・主要顧客は欧米企業で主言語は資本系列の母国語+英語。
・日本語に対応しているケースは稀。

 以下、上表を元に利用者側のタイプ別に選定していきたい。日本企業がITエンジニアを求めてアウトソーシングする場合は、①~④が候補になり、どのタイプの企業にアウトソーシングするかは依頼側の企業のニーズによって異なる。従来は、大手SIerを通してベトナムを活用する③-B「大手SIerの海外開発拠点」でのアウトソーシングが主流であったが、2010年以降は中国オフショア市場の価格上昇に伴い東南アジア諸国が注目され始めた。

 中でも日本に友好的で、国家をあげてITエンジニアの育成に取り組むベトナムへの注目が高まり(本連載第1、2回参照)、①と③-Aを利用する日本企業が急増した。2016年以降は、ベトナム人の起業家が台頭。②のベトナム資本のベンチャー企業が数多く日本市場に参入してきている。こういった背景から現在は5年前に比べてアウトソーシング先の選択肢が広がっている。

事業ドメイン:グローバル展開企業

 現在、大型プロジェクトでエンジニア数も100名規模になる場合、基本的に日本のSIerを通して③-Bを利用するか、あるいはベトナム資本の大手タイプ①がまず候補になるだろう。 ①のタイプは、ベトナムでのリモートによるオフショア開発だけではなく、ベトナム人エンジニアが日本法人に所属し、顧客のオフィスに常駐する開発形態も提供していることが特徴だ。

事業ドメイン:アウトソース事業主体〈主要市場は日本〉

 日系資本の③-Aのタイプも300~1,000名規模に拡大する企業も現れ始めている。大型プロジェクトの場合は候補に挙げられるだろう。400名規模の当社の場合でも1顧客での最大チーム編成規模が100名弱のケースがみられる。

 多くの企業がオフショアを活用する際、候補に挙がるのが③-Aのタイプだ。最初は5~10名規模で、社内開発プロジェクトの一部をアウトソースする場合が多い。このタイプは大手SIerにはない柔軟な対応やコストメリットがあるため、以前はスタートアップやIPOを目指すベンチャー企業が中心となって多く利用していた。近年では、③の企業も規模が300名を超え企業体力などの面で余裕がある企業が増加し、大手企業の利用が増えている。大型プロジェクトを受注できるだけの体力や経験に加え、知見も備えるようになり、日本国内の顧客ニーズをキャッチアップしながらさらに規模を拡大させている。得意な開発言語と開発領域、経営スタイルや企業文化などの面で多種多様な企業があり、多彩な選択肢から選択可能だ。

事業ドメイン:アウトソース事業〈主要市場は欧米〉

 欧米資本の④に関しては、コミュニケーションが英語中心になるため、インドなど既存の委託先からオフショア先を移管する場合の候補となるだろう。しかし、日本法人が無い場合が多くベトナム法人と英文での契約、USドルでの支払い等の対応が予想される。契約、支払い面などを考えると、日本法人をもつ①②③のタイプの中から英語対応できる企業を探した方が良いだろう。また、ベトナム以外のフィリピン等の英語圏の国に開発拠点を構え、日本法人を持つ企業も候補になるかもしれない。

 事業形態に加えて本社の所在地=メイン拠点も企業選定の上では重要だ。南北に長いベトナムでは、首都機能、政府機関がある北部のハノイ、最大商業都市である南部のホーチミンが2大都市である。これに加え、中間点に位置するリゾート都市であるダナンは第3のIT拠点都市として近年急成長中である。何処に本社及び拠点を展開しているかも選定基準の中に入れておきたい。

次のページ
日本におけるグローバル開発の在り方

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この記事の著者

今井 徹(イマイ トオル)

株式会社コウェル 経営戦略室 室長。20代で株式会社アライドテレシスにてLAN/WAN製品の営業、マーケティングに従事。その後、複数社の国内ステルスモードのスタートアップベンチャーでマーケティングを担当。 その後ビットアイル(現エクイニクス・ジャパン)のグループ企業で、マーケティング、BO部門、ビッ...

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