2025年に標準サポートが終わるということは何を意味するか
「2025年にハードシャットダウンが起きるかは疑問です。すでに日本国内に2000社ほどの導入がありますから」
のっけに大西氏はこう切り出して疑問を呈した。「標準サポートは2025年まで」というのはSAPが発表したので、動かさざるをえない事実だ。ただし、標準サポートが終了するからといって、全くサポートが受けられないという状況は考えにくい。
大西氏が指摘するように、日本国内では2000社ほどの企業がSAP ERPを運用している。ERPはあってもなくても問題ないような軽いシステムではない。会計、人事、物流などを包括した、企業のビジネスを支える重要な基幹システムだ。定着したら、止めたり変えたりするのは難しい。それほど重要なシステムであれば、乱暴にサポートを受け付けなくなるというのは考えにくい。
標準サポート終了したとして、実際にどれだけ問題が生じるかも不明瞭だ。長年使っていれば、サポートがなくても問題は生じないかもしれない。そうはいうものの、長い間気づかなかった脆弱性や不具合などが、いつか表面化するかもしれない。あるいは法改正への対応など、何らかのシステム修正が必要になるかもしれない。そういう場面に直面したとき、サポートが受けられないことはリスクになる。ただし、これらは全て「かもしれない」という可能性であり、必ず起きるとは限らない。
安心材料もある。過去にSAPは標準サポートが終了した製品をサポートしたことがあるからだ。多少の割増料金が発生するかもしれないが、サポートを延長する可能性や何らかの形でサポートが受けられる道はあると期待できる。とはいえ、SAPはまだ2025年以降のサポート体制について何ら発表はしていないので、あてにすることはできない。SAP以外の企業がサポートを請け負う可能性もある。これもどこまで、いつまで頼れるかは定かではない。
標準サポートが2025年に終了することは明確でありつつも、終了日を境にSAP ERPのサポートの扉が完全に閉められてしまうことは考えにくい。また、実際に致命的なことが起きるかどうかも疑問だ。2025年以降に何が起こるかはまだ分からないことだらけだ。
なお、SAP SEが発表した2018年度第1四半期決算によると、グローバルのSAP S/4HANAの顧客数は8,300社を越え、前年同期比で43%増加とある。