学習済みのAIモデルからハードウェアまでをトータルにカバーする
さて、AIに関するオラクルの基本戦略を見てみると、そこでは「ビジネスモデル、プロセス、課題設定」「スキルセット、体制」「ビジネスデータ」「インフラストラクチャ」が、エンタープライズでAIを活用する際のポイントとなっている。また大橋氏によれば、「AIを必要とする課題があるのか、あるなら目標は何か。必要なスキルをどう補うのか。さらにデータの入手、処理、管理をどうするか。それらの分析サイクルをどう高速化していくのか。これら4つのステップを支えるサービスやアプリケーションをトータルに提供できる」点が、オラクルのエンタープライズAIの大きなアドバンテージだという。
具体的には、学習済みのAIモデルからAIプログラムの開発・稼働基盤、GPUやフラッシュストレージなどのハードウェアまで、エンタープライズAIに必要なすべてのレイヤーをカバーする製品が提供されている。ユーザー企業は自社でAI環境をゼロから開発する必要がないので、ビジネスの要請に応じて最適のサービスやアプリケーションをスピーディーかつ容易に導入可能というわけだ。
また、世界最大規模のデータマーケットプレイスを自社で提供している点もオラクルのAIならではだ。さらに2018年5月には、データサイエンスプラットフォームのプロバイダであるDatascience.com社を買収して傘下に収めた。Datascience.comは非常に強力なツールであり、「プロジェクトの定義」「モデルの作成・学習」「学習済みモデル管理」「学習済みモデルのデプロイ」の4つのクラウドサービスを提供する。これを利用することで、ユーザーは分析モデルの開発から日常的な管理、さらに必要に応じたカスタマイズまでをトータルにこのプラットフォーム上で実行できるため、ビジネスオンデマンドでスピード感のあるAI開発サイクルを実現可能だ。
なお、オラクルのAIインフラとしてのGPU Cloudを利用している例には、株式会社GAUSSの同社のクラウドAIプラットフォーム「GAUSS Foundation Platform」がある。GAUSS Foundation Platformは、Oracle Cloud Infrastructure上で構築されており、同社が提供するGIレースのビッグタイトルも的中したというアプリ「AI競馬予測–SIVA–」や、AI技術を活用してファッション領域に特化した画像解析や自然言語処理などを行うEC管理システムなどを支える。株式会社GAUSS 営業部 野下龍氏によれば、Oracle Cloud Infrastructureを選んだのは、“簡単・低コスト・短期間”でAI事業展開が可能だったからとのことである。