最初はテストツールから始まったRPA
RPAは業務の自動化を実現するため、業務改善や生産性向上といった側面から期待されている。画面操作を録画(キャプチャ)して作る手軽さや、他に転用可能といった汎用性が特徴だ。複数のシステムからのデータ連携でもプログラミングが不要で、いわゆるEAIツールよりもシステム化のハードルが低い。これまでシステム化が見送られてきたところにうまくはまる。「かゆいところに手が届く」とよく言われる。
イメージ的には、RPAはこれまで人間が作業していた業務をロボットに代行してもらうことになる。それで海外ではRPA導入の成果として人件費削減が挙げられたりする。日本では「働き方改革」に絡めて、作業(残業)時間の短縮が挙げられたりするようだ。例えば月末のレポート作成業務。複数のシステムからデータを収集し、人間がある程度の判断しながら何時間もかけて作成していたところ、RPA導入で短時間で作成可能となり、早く帰宅できるようになった……といった成功事例が語られる。
こうして業務改善で期待されているRPAだが、保坂氏によると、もとはシステムのテストツールから始まったという。かつてのシステム開発の検証段階では、メニューやボタンを人間が実際に操作し、正常に作動するか確認していた。90年代にまだシステムエンジニアだった筆者は古い検証現場を目にした記憶がある。例えばOSのバージョンアップに伴い、アプリケーションがきちんと動作するか検証する場合、アルバイトに一通りメニューを操作してもらうのだ。チェックリストにある通りに、ひたすら確認のための単純作業を人間が繰り返す。プログラムに変更があれば、再び検証作業を繰り返す。このような定型的な単純作業を自動化するためにRPAが生まれたという。
業務で使われ始めたのは2005年ごろから。イギリスのBlue Prismが金融系業務にRPAを導入、関連してペガがCRMにDPM(Digital Process Automation)を導入するなどで自動化が進んでいった。日本では2016年ごろから、銀行や保険を中心にRPAが普及し始めた。これが日本におけるRPAの最初の波だ。最初はイギリスのBlue Prismによる成功事例に追随するような形で、金融系企業がコンサルティング会社を通じてRPAを導入していた。
最初は高価だった。しかし「人間を1人雇うよりは安い」が落としどころとなり、導入されていく。とはいえロボットの単価が高いうちはそんなに導入できなかった。次第にRPAは1ロボットから導入できるようになり(当初バラ売りはなかったらしい)、ハイエンドではない単純作業向けの安価なロボットも登場するようになってきた。近年ではRPAの価格がこなれてきたというところだ。