前回はMicrosoftとVMwareの持つ仮想化製品ラインナップや基本アークテクチャーをご紹介しました。今回は主にVMware ESX 3.5とHyper-V 1.0を対象に、製品の仕様や機能の比較を行います。
[比較3]: 導入システム要件
最初に、サーバー仮想化製品を導入するために必要となる仕様を確認します。表1はVMware ESX 3.5およびHyper-V(Windows Server 2008)の主な導入要件です。
項目 | Hyper-V 最小システム要件 | VMware ESX 3.5 最小システム要件 |
---|---|---|
プロセッサ |
1.4GHz 以上の Intel またはAMDプロセッサ
|
1.5GHz以上 のIntelまたはAMD プロセッサ
(ESX 4.0ではx64版のみ提供予定) |
メモリ | (Windows Server 2008として)512MB 以上 | 1GB 以上 |
ハードディスクの空き容量 | 10GB 以上 | 明記なし |
ネットワークアダプタ | 1つ以上のイーサネットコントローラー | 1つ以上のイーサネットコントローラー |
OS |
以下のいずれか。
※いずれもServer Coreでの動作が可能。 |
VMware ESX 3.5 |
これらはハイパーバイザーを稼動させるための"最小システム要件"であり、これを満たすことと仮想マシンを含めて現実的に動作するスペックは異なります。あくまでもひとつの目安であると考えてください。
まずHyper-Vのシステム要件を確認しましょう。最初に注目すべき点は、64bit CPU(x64)上の64bit版Windows Server 2008でのみサポートされていることです。Windows Server 2008自体は32bit版も提供されていますが、32bit版OSではHyper-Vを導入することができません。
またHyper-Vを稼動させるためには、仮想化支援と呼ばれる機能がCPUに実装されている必要があります。これは、従来ソフトウェア・エミュレーションによって実現していた仮想マシン用ハードウェア・リソースの制御をハードウェアで代替する機能で、Intel製CPUであればIntel VT、AMD製CPUであればAMD-Vと呼ばれています。前回Hyper-Vの基本アーキテクチャーをご紹介しましたが、Hyper-Vはハイパーバイザー層を極力シンプルかつ軽量にするという設計思想を持っており、デバイス・ドライバなどを外出ししています。ハードウェア・リソースの制御もIntel VTやAMD-Vを活用することによって、オーバーヘッドを削減すると同時にハイパーバイザー層の極小化に貢献しています。同様の理由で、データ実行防止(DEP)と呼ばれる機能がハードウェアレベルでサポートされている必要があります。DEPはデータの誤実行を防ぐための技術であり、セキュリティを高める効果を持ちます。
いずれの機能も最新のx64サーバーであればほぼ間違いなくサポートされていると考えて問題ありませんが、余っているサーバーで動作検証してみたいという場合は注意が必要でしょう。なおこれらの機能は、BIOSから有効/無効を切り替えられるようになっているのが一般的です。
一方のVMware ESX 3.5ですが、ハードウェアに対する要件は多くありません。従来は「2つ以上のプロセッサが搭載されていること」などの要件がありましたが、現在では緩和されています。またCPUによる仮想化支援も64bitゲストOSを稼動させる場合は必要ですが、ゲストOSが32bitに限られる場合は不要です。
ただしハイパーバイザー層にドライバを組み込むというアーキテクチャー上の理由により、システム要件を満たしているサーバーと実際にVMware ESXの導入がサポートされるサーバーは必ずしも合致しません。システム要件が満たされており、かつVMware社が認定したハードウェアのみが、VMware ESXの稼動するハードウェアであると考えたほうがよいでしょう。VMware社では「システム互換性ガイド」というサポート対象ハードウェアのリストを提供していますので、実際にVMware ESXやESXiの導入を検討するときはこちらのリストに準拠しているサーバーを選択してください。