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ガートナーに訊く、顧客体験ITサービス関連の動向

オリーブ・ファン氏インタビュー

 多くの企業にとってデジタル・トランスフォーメーションを実現することは、顧客体験を変革することだとも言われる。IoTやモバイルを、さらにはそれらから得られるデータを活用し、新たな顧客体験を提供する。この顧客体験の変革に大きく寄与するのが、マーケティング・オートメーションやCRM、さらにはカスタマーサポートのサービスの仕組みだ。これら顧客エンゲージメント領域のITサービスの動向について、ガートナーのバイスプレジデントでアナリストのオリーブ・ファン氏に話を訊いた。

デジタルトランスフォーメーションで顧客体験を向上させるために、企業は何を考えればいいのか

 ガートナー アナリスト オリーブ・ファン氏
ガートナー アナリスト オリーブ・ファン氏

Q:日本では2000年代の初め頃に、CRMシステム導入のブームがありました。しかしながら当時は、実装に苦労する企業も多くあまり成功した事例は出ませんでした。2000年代の後半になるとSalesforce.comが登場し、以降は徐々にCRMのイメージも改善され導入が進んだように思います。この傾向は、グローバルでも変わりませんか?

ファン氏:ここ10年ほどの間にグローバルのCRM市場でSalesforce.comが台頭し、CRMがオンプレミスからSaaSへと移行しました。結果的にSalesforceは、かつてのシーベルやSAP CRMなどのオンプレミスCRMのソリューションに挑戦し勝利したと言えます。SalesforceのSaaSが成功した理由としては、エンドの組織のニーズに応えたことがあります。オンプレミスの仕組みは、ソフトウェアを購入し所有することで長期にわたりその面倒を見なければなりません。その間には改善も、自分たちで行わなければなりません。対してSaaSは、サブスクリプション型でイノベーションを継続して購入者に届けることができます。そしてSalesforceが常に機能や性能を更新してくれるので、利用する側もそのサービスに信頼を置くようになりました。結果的に金融機関や通信事業者などが、率先してSalesforceの仕組みを使うようになったのです。

 SaaSであれば、サーバーやデータベースなどを所有する必要はなく、その面倒を見る必要もありません。利用者側は、ビジネスのアウトカムに注力できるのです。このSalesforceのSaaSの成功は、CRMの成功だけではなくクラウドの成功だとも言えるでしょう。

 Salesforceが日本市場に参入した際は、同社は米国市場では既にある程度の成功を収めていました。そんなSalesforceが日本でビジネスを成功させるために、2つの意思決定をしています。1つが日本にデータセンターを置くことです。もう1つが、日本市場にいる大手SI企業と密接な関係を築くことです。日本のローカルSI企業と手を組んだことが、日本市場での成功を後押ししたのです。

Q:顧客体験のソリューションでは、これまではCRMやマーケティング・オートメーションがその中心を担ってきたイメージがあります。ところが最近になりカスタマーサービス、カスタマーサポート部分の重要性が増しているように思うのですが?

ファン:たしかに、カスタマーサービスのところは重要になってきています。とはいえその状況は、業界によっても異なります。一般消費財を扱うような領域では、マーケティングのところが重要です。たとえばそれは、ペットボトルの水を販売するビジネスを考えてみれば明らかでしょう。ペットボトルの水には、手厚いカスタマーサービスは必要ありません。流通をスムースに行い、小売店舗なりに確実に商品を届けることで成り立つビジネスは、カスタマーサービスがあまり重要ではないのす。

 一方で、銀行は大がかりなマーケティング活動も営業活動も必要です。支店などの営業拠点での活動もたくさんあります。それら活動に対応するカスタマーサービスのニーズは、強いものがあります。このように業界ごとにカスタマーサポートのニーズは異なり、カスタマーサービスの提供方法も違います。

 このこととは別に、すべての業界で起こっている2つのトレンドがあります。従来の対面での対応、紙での対応、さらに電話での対応から、SNSやチャットなども利用するオムニチャネルでの対応になったことが1つです。今はさまざまなチャネルを使い、カスタマーサービスを行います。チャネルが増えると、新たな対応にコストが発生します。そのためにより効率的な対応方法を選択し、サポート業務の運用コストを下げようと考えます。

 もう1つのトレンドは、カスタマーサービスでより顧客とつながったサービスが求められていることです。たとえばコーヒーサーバーを購入し使用する場合には、壊れたときに商品をサポート窓口に送ります。故障するまでは顧客との接点はなく、商品を送って初めて顧客とつながるのです。現在はユーザーと製品がつながり、壊れてからではなく購入して利用している間も含め、ユーザーに継続的にサービスを提供することが求められます。家電製品やクルマ、あるいは医療機械などでは、こういったサポートが求められているのです。

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顧客体験向上のための仕組みは今後どう進化するのか

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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