フレームワークによりデータガバナンスを容易にする
川上氏はデータガバナンスフレームワークについて、その全体像を示した。大きく「ビジネス要件」「データガバナンス」「データマネジメント」「方法論」「適用ソリューション」に分かれている。まずはこれらの構成要素について説明した。
ます、「ビジネス要件」を明確にすることが重要。データガバナンスの取り組みそのものをROIに結びつけることは難しいため、投資を組織的な活動の推進要因、目的とできる限り紐づけることが必要になる。たとえば、企業統合が近いため法令遵守のためにデータガバナンスを使う。あるいは運用の効率化のための工数削減を目標にすれば、定量評価がしやすくなる。いずれにしても、課題と結びつけながら目指すべきゴールを明確にして、組織に所属する各個人に意識づけをすることが非常に大事なこととした。
「データガバナンス」では、一元化されたポリシーがきちんと計画、定義されていることが重要。ここでは企業文化や組織の壁、人員配置などの課題があるため、成果を判断するための「目標定義」、問題が発生した際に参照可能な行動指針となる「指導原則」、複数の部門から責任者をアサインしてデータガバナンスの活動を行う「意思決定組織・体制」、この組織に適切な承認権限を与え、活動原則の定義を維持する「権限委譲」の4つを必要な要素に挙げた。
「データマネジメント」は、データガバナンスのステップといえるもので、定義した各ポリシーを実際に導入していくための機能を表す。全体像では8つの機能が表示されているが、川上氏は特に「メタデータ」と「データ品質」の考え方が重要であるとした。メタデータには、業務メタデータとシステムメタデータ、そして運用メタデータの3種類が存在する。これらをしっかり把握、管理し、セキュリティ対策を施す必要がある。データ品質は、データの有効性や妥当性を検証し、ポリシーに沿って標準化することが重要とした。
データガバナンスとデータマネジメントの間に「データスチュワードシップ」とあるが、データスチュワードとはデータの専門家のこと。さまざまなシステムのデータに精通し、定義や利用方法に責任を持つほか、データガバナンスにおける部署間の調整や発生した問題の解決に取り組み、報告の責任も持つ。多くのスキルが必要とされるためアサインが難しいポジションである。そこで、各部門のスペシャリストを集め、バーチャルチームとして運用するケースも多い。
方法論では、「人員」「プロセス」「テクノロジー」が必要な要素となる。人員は主に役割を明確化する人員配置。プロセスは、効果測定のプロセスとコミュニケーションプロセスの2つがある。テクノロジーは次のソリューションともつながるが、データガバナンスを円滑に、そして効率的に実行するために必要な機能を自動化するようなツールのことで、SASではデータガバナンスに必要となる機能をすべて、ソフトウェアソリューションという形で提供しているとした。