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【A-3】なぜ経理部員はやめていくのか? 連結グループ決算 早期化/標準化へのシナリオ

国内企業に求められる法規的背景や、組織改編(M&A、事業会社化)により、企業会計が益々複雑高度化し、専門家の育成が不可欠な時代へ突入している。現場では経理業務の肥大化・煩雑化が進む一方、経営者側は、制度に無駄なコストをかけずに、グループ全体の業績を今すぐ見たい。経理人員を定着させたいと求めている企業が多いようだ。JICは会計分野における多くの実績・経験を通し、連結会計の戦略的システムを紹介。さらにローコストに業績評価会計を可能とし、高いグループ統制レベルを実現しながら標準化できるソリューションを紹介する講演となった。  

高まる一方の経理部員への負荷と、経営層との意識のギャップ

株式会社ジェーアイシー 専務取締役 / 税理士 鶴巻榮 氏
株式会社ジェーアイシー 専務取締役 / 税理士 鶴巻榮 氏

  鶴巻榮氏によるセンセーショナルな講演タイトルの背景には、会計を取り巻く環境が以前と比較して極めて難しくなっている事情がある。

  例を挙げると四半期決算の45日以内開示、固定資産法定耐用年数変更、新リース基準の制定などがある。そして2011年の国際会計基準への対応だ。

  そのため一人が持てるキャパシティを飛び越えて、負荷が集中している。特に新興企業の場合は歴史が無いため、さまざまな意味での標準化が遅れている。より一層、矢継ぎ早の企業会計への要求への対応が困難だ。

  一方、経営者側は制度に詳しくないため、対応は簡単だと錯覚している。

  同時にグループ全体のリアルタイムな業績把握に対する要求は高まる一方だ。鶴巻氏はそういう意味で経営者と、実際に連結決算や内部統制をやる担当者との間に、いわゆる心理的な溝が広がりつつあると指摘する。

連結会計における統制の課題

  鶴巻氏は、連結決算では今までの会計の延長線上ではだめで、やり方を抜本的に変える必要があるという見解を披露した。

  連結決算における統制のレベルで、最も下位にあるのは、各単体子会社の決算の積み上げによるものだ。この方式では各社に経理の専門家が必要で、連結決算部署と子会社で情報乖離の可能性もある。

  そこで親会社に経理業務を集中するのがレベル2だ。ここではグループ内統一システムを整備し、グループ経営情報の標準化・一元化を実現することが望ましい。

  そこで業務システムのデータを自動仕訳して会計システムに送る部分の構造を、連結決算の事務負荷を減らす整合性のあるものにしておく。

  さらに一歩進んだレベル3として提示されたのが、集中してグループ資金管理を行う「子会社にカネを置かない」という手法だ。

  たとえば子会社の買掛金として保持しておいたものを、支払う瞬間に親会社との連結内部取引を起こし、親会社から支払うという処理をする。子会社は小口以外の決済はしないで済む仕掛けを作る。収益と事業の拡大を子会社の存在目的とし、内部統制上、子会社不正を抑制する。

  ただ、レベル3実現のためには、グループ全体を一元管理する必要がある。

  まず、グループの集中予算管理が必要だ。ただ、子会社ごとに予算を立て、それを連結会社に持っていき、合算すると始めてグループの予算ができるという方式は原始的であり、作業における負担が大きい。

  また、グループの固定資産管理、リース管理も極めて複雑化している。

  現在のように設備投資を抑制するニーズが出てくると、個別会社を飛び越えたグループ固定資産管理という概念なども求められるが、その早期算出は困難だ。

統制を完全自動化するメリットとは

  そこでJICが提案するのがレベル4の「完全自動化」だ。

  ここでの考え方は、グループ全社会計処理ファイルを一カ所にまとめ、そこから自動仕訳で個別会社の制度会計情報を自動生成する。さらにそこから連結会計のデータも自動的に算出される。

  そこでたとえばグループ内部取引で売上と仕入れが発生すれば、計算上は自動的に相殺される。そのため、最後に出て来た利益は、相殺消去後の利益になる。経営者は毎日、利益の実態を把握することが可能だ。

  個別ファイルから連結決算に持っていくというのが原則論だが、そこをもう一度連結合併という形で、連結のシートの中にインポートしていけば、連結決算という大きなプロセスの管理が自動化できる状態になる。ただ、そこでの考え方は、多岐にわたる。

  ここで鶴巻氏はいくつかの実例を挙げて分割仕訳のポイントを解説した。たとえば本社小口現金でA法人の修繕費を支払った場合、親会社で子会社の分もすべて集中支払いをした場合、給与支払仕訳、子会社回収専用預金口座を親会社に振り替える場合の仕訳などだ。

  最後に連結立替金の精算仕訳というレベルがあるが、最終的に連結貸付金、借入金に収れんさせる。具体的なキャッシュは動かないのがポイントだ。集まってきた借入金、立替金についてグループ内金利をきちんとつけ、それをお互いに計上する仕掛けを作っておけば、会社の独立性も何ら損なわれない。

  JICの戦略型財務会計システムは、それぞれのデータに部門コードさえきちんとつけておけば、あとの処理はコンピュータが論理的に整理して分割仕訳を作る概念で作られている。

固定資産、リース資産管理も自動化

  グループ固定資産については、法人単位でファイルを作成し、管理するのが一般的な手法だ。そのため、グループ全体をみたい場合はその都度合算しなければならない。

  一方JICのグループ管理型固定資産管理システムは、一社のシートの中にN法人、N子会社、N支店など全部を網羅し、一元管理できる仕掛けを持っているので合算の必要が無い。

  また、法人税法上の別表作成、償却資産税申告は、法人単位に作成可能だ。固定資産の仕訳の種類は70程度あるが、全て自動連動でできる。

  またリース会計基準に伴い会計処理が複雑怪奇になった結果、リースが減っている。JICの提供するソリューションではリース関連の会計処理も自動的にできる。

  鶴巻氏は「金融情勢の逼迫によるリースの再増加など、状況の変化にも対応可能だ」と語り、セッションが終了した。 

 

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