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【C-2】会計コンバージェンスに向けたマネジメント体制強化

~2010年の賃貸等不動産の時価開示とセグメント会計対応~

国際会計基準へのコンバージェンスの動きは加速され、企業では毎年対応に追われている。これらには会計処理やシステムの変更のみで完結する項目と、事前の経営レベルの対応が必要な課題がある。2010年から導入される賃貸等不動産の時価や収益性開示では制度への対応のみでなく、未着手状態にある企業不動産全体のマネジメント体制(Corporate Real Estate Management)を確立すべきだ。セグメント会計では開示と管理実体とを一致させることが重要で、経営レベルでの判断に使う管理数値をそのまま開示することになる。

会計コンバージェンスの状況

三井情報株式会社 総合研究所 代表プリンシパル 土屋哲雄 氏
三井情報株式会社 総合研究所 代表プリンシパル 土屋哲雄 氏

 土屋哲雄氏は「会計コンバージェンスはグローバル化の最後の仕上げであり、単に会計、経理の問題だけでなく、経営総体の変革につながると捉えている」と語る。

 会計インフラのグローバル化は、ヨーロッパの国際財務基準(IFRS)に収れんしつつある。現在、予定を含めて採用は、EU諸国の他世界100カ国に及ぶ。日本は2007年にIASBとコンバージョン合意し、米国も2014年から国内企業に順次義務化する。

 土屋氏はIFRSの特徴の中から、時価会計と原則主義についてポイントを紹介した。IFRSでは「公正価格を観察可能な資産はすべて時価評価の対象とする」とされている。そこでたとえば企業結合において、のれんは従来の日本基準のような償却ができなくなる。開発費も経費から資産に計上される。廃棄費用や従業員退職後給付なども問題だ。

 一方、原則主義への対応だが、規定自体は簡潔で分かりやすい。その代わり、開示項目が多く、どういう形で行うかは示されていない。自社で指針を作成し、監査法人と相談することになるが、その際、同業者の動きの観察や、会計ソフトベンダーからの情報収集も対応のベースになる。SI業界の工事基準導入では情報サービス産業協会(JISA)の適用マニュアルが参考になっている。 

会計制度の変化への会計と経営の対応

 講演の第二のテーマは、実際の会計対応、セグメント会計と賃貸等不動産の説明だ。セグメント情報等の開示における最大の問題は、経営者視点での企業評価を原則とするマネジメント・アプローチへの移行だ。

 セグメント会計における開示項目は、セグメント情報、関連情報、減損損失、のれんの4つに分けることができる。ここで開示されるのは、意志決定機関に報告される金額であり、それを見れば経営者の行動を予測することができる。

 経営資料そのものを開示するので、開示レベルが高ければ経営者の評価が高くなる。IRと同様、株価にもプラスの影響が考えられる。

 一方、賃貸等不動産の時価開示が2010年から始まる。賃貸等不動産保有の目的は賃貸収益とキャピタルゲインであり、まず、事業部や子会社が持っているものを本社で一元化管理する必要がある。

 そこでは賃貸等不動産の時価と損益が開示されるが、固定資産管理システムの改修だけではカバーできす、個別に不動産管理システムが必要なケースもでてくる。ここで土屋氏は、賃貸等不動産を一括して注記する場合と、管理状況に応じ区分して注記する場合の開示例を示した。

 一方、企業が事業のために保有している不動産を企業用不動産(CRE)と呼ぶ。CREの会計コンバージェンスは、経営・業務レベルの対応が必要であり、CRE全体をマネジメントする機会でもある。そこで土屋氏は、連結でCREを見るCREマネジャーかCREディレクターの設置が必要ではないかと語った。

 CREマネジメントではまず、自社のCREを把握する必要がある。次に財務戦略に使うのか、事業戦略に貢献するのか二つのポイントで最適化計画を作成する。

 三井情報にはCREマネジメントに対応し、CREの可視化、物件管理・契約管理、ポートフォリオシミュレーション、企業価値シミュレーションなどを可能にするソフトウェアとコンサルテーション体制がある。

システム面での対応

 ここで三井情報の会計パッケージソフトの開発責任者である大塚氏が登壇。

 会計コンバージェンスにおけるシステム対応について述べた。ここでのメインテーマはセグメント会計への対応で、ポイントはセグメントパターンの無限化、セグメントツリーの無限化、セグメント内取引とセグメント間取引の選択、セグメントでの二期比較であり、非常に重要なのは前の二点だ。

 セグメント会計ではある一定の会計単位を集約し、セグメントとして開示するが、そこではマネジメント・アプローチの視点が求められる。同時に業績だけでなく、マネジメント・コントロールの質も開示されることになり、評価の対象となる。その質的向上のポイントとして大塚氏は、既存事業イノベーションについてのマネジメント・コントロールを挙げた。

 では、マネジメント・コントロールの質を高めるためにはどういうシステム対応をすべきか。まず、経営情報と会計情報をシームレスに繋ぎ、意思決定を迅速に行うことができるマネジメント・コックピットが必要だ。さらにマネジメント・レイヤーに適合した経営管理情報と会計情報を参照できるようにする。つまり、経営管理情報の階層化を行う。

 これらを可能にするシステム対応として、求められるのは三点。

 ①マネジメント・コントロール上、要求される経営管理情報を保持できるシステム、②経営管理情報を階層化して管理できるシステム、③経営管理情報と会計情報が一体化したシステムだ。

 大塚氏はセグメント会計とマネジメント・コントロールの向上に求められるシステム対応は同じであり、セグメント会計対応と共にマネジメント・コントロールの向上を一体で進めることが可能と述べ、セッションを閉じた。

 

 

 

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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