従来の会計基準の変更と国際基準の全面採用に、企業はどう対応すべきか。また、そのために必要とされるITをいかに駆使すべきか。
「会計コンバージェンス/アドプションに向けたITの役割」について講演した日本オラクル アプリケーション事業統括本部 担当ディレクターで、日本CFO協会主任研究員、ITコーディネーター、公認システム監査人の桜本利幸氏は、始めにIFRSの導入について、「インテグリティが保証され、透明性の高いグループ経営戦略の立案と実行が可能となり、その裏返しとして金融機関やマーケットへのIRにも有益になる」と、三つの視点からそのメリットをまとめた。
さらに、企業活動のグローバル化によって複雑化する経営管理について、「見えますか? 正しいですか? 手を打てますか?」と問い掛け、IFRSへの対応はもとより、J-SOX、45日四半期開示、EDINETでの開示など、同時に行わなければならない会計制度変更への対応として、「その『解』は、『シェアード型EPR×EPM』にある」ことを強調した。
「シェアード型ERP×EPM」の中身
オラクルでは、10年以上前からERPとEPMを提案してきたが、その構成要素は、日々増え続けており、とどまることなく進化を重ねている。
例えばERPには現在、購買管理、債務管理、債権管理、不動産管理、固定資産管理、仕訳生成エンジン、プロジェクト管理、財務/資金管理、内部統制監査、などがモジュールとして実装されており、これらの構成要素が、リース会計、棚卸資産評価、在外子会社会計基準統一、工事進行基準、開発費資産計上、金融商品公正価値、ストックオプション、内部統制、などのコンバージェンス要件に対応する。
EPMにおいても、戦略的中長期計画、連結会計、予算管理などのモジュールが、企業結合、セグメント報告、過年度遡及修正などに対応している。このように、「ERP×EPM」は、コンバージェンス要件に対する網羅性を担保しているといえる。
桜本氏は、これらのうちから、セグメント報告、資産除去債務、工事進行基準、金融資産の公正価値開示とグローバルキャッシュマネジメントなど、代表的なコンバージェンス要件とその対応を取り上げて、IT的にどのように解決できるかを説明。例えば、セグメント報告では、「財務会計に必要な勘定科目に加えマネジメントアプローチに必要なセグメント情報」と、それらの「各セグメントの複雑で無制限な階層構造」を図示した上で、「我々のERPは取引をこのような財管一致の勘定科目により記帳しその残高を集計、結合することによりセグメント報告に対応している」と語った。
経営新時代へ向けたオラクル自身の取り組み
会計基準のコンバージェンス及びアドプションの「解」は、本当に「シェアード型ERP×EPM」にあるのか。
桜本氏は、その答として、実際にオラクルの事例を挙げて、アプローチと成果を示した。
同社が目指したのは、2010年に世界No.1のビジネスソフトウエア企業になることであり、そのためにグループ経営情報の見える化、連結決算の早期化、内部統制の強化、ビジネスの変化に柔軟に対応するシステムの構築、標準プロセスの導入、などを目標にして、ビジネスプラットフォームの統合を図ったのである。
具体的には、シェアードサービスセンター(SSC)への業務統合、業務プロセスの統合、インスタンスの統合、データセンターの統合、そして金融統括会社の設置という5つの統合を推進し、実現させた。その結果、コスト低減、決算の早期化、マネジメントレポートのグローバル化、グローバルキャッシュマネジメントの実施、SOX法(日本ではJ-SOX法)への対応、成長戦略の基盤確立、などの成果を生んだという。
桜本氏は最後に、経営管理基盤構築に向けたアプローチとして、「グローバルに一つのシステムをつくるという方法ではなく、まずはEPMを使ってデータの読み替えと収集から始めて、少しずつ統合していくという方法、つまり、レポーティングベースでコンバージェンスに対応していくというアプローチもリーズナブル」と述べた。