「急がば回れ」 目先のスピードにとらわれず、結果的に一番早い道を選ぼう
「事前に説明するのは時間の無駄」ということで、作業を行いながら実況中継のように説明する。こういうケースは結構多いのではないでしょうか。一見すると効率的なようですが、時と場合によっては十分な効果が得られません。
例えば、既に基本的な部分は把握している人に、応用的な内容を教える場合であれば、実況形式も有効でしょう。自分が何を学ばねばならないかを理解しているので、聞き手は自分にとって必要な部分に絞って先輩の作業を見ることできます。
逆に言えば、初めての作業を学ぶ場合は、どこをどんな風に注意して見る必要があるのか判断が付きません。先輩の手順のどの部分が重要で、どの部分がそうでないのか。それが分からなければ、どこにも焦点を合わせることができずに、作業をただただ眺めて終わってしまうことになります。
実は私自身にも苦い経験があります。新入社員の頃、私を指導してくれた先輩が「今から書くから見ていてね」と書類作成の手順を見せてくれたことがありました。先輩は作業を終えると、私に「じゃあ、やってみて」と言いました。そこで、私はそっくりそのまま先輩が書いた書類を丸写しにしました。
ところが、先輩は「手順がぜんぜん分かってない。何を見ていたの? 私はどうやって書いていた?」と聞くのです。私は苦悩の末、「先輩は字がきれいでした」と答えて、ひどく叱られてしまいました。私には、先輩の作業のどこが重要で、何に注意して見ていれば良いのかが分かっていなかったのです。
先輩は、作業の趣旨や手順を説明し、もう一度目の前で実演して見せた上で、私に再チャレンジをさせるハメになりました。結果的に、2倍以上の時間と手間がかかってしまったのです。
どんな内容であっても、初めての作業を教える手順は、以下のような手順を踏みましょう。一見遠回りに見えても、結果的には一番の近道となります。
- 教える準備をする(STEP1)
- 作業内容を説明する(STEP2)
- 作業を指示する(STEP3)