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ワークプレース・エクスペリエンス(WX) ― 従業員の体験向上が良いサービスを生む


これからは顧客だけではなく従業員の体験もよくしていこうという動きがある。新入社員が新しい職場になじみ、中間管理職が効率的にタスクを処理するなど、従業員が心地よく働けるようにするには何が必要か。そうすると企業やビジネスにどんな変化が起きるのか。

企業がワークプレース・エクスペリエンス(WX)に取り組むと何が変わる?

Avanade  モダンワークプレース・グローバル・リード担当幹部 フローリン・ローター 氏(Florin Rotar)

Avanade モダンワークプレース・グローバル・リード担当幹部 フローリン・ローター 氏(Florin Rotar)

−−まずは自己紹介をお願いします

 アバナードでモダンワークプレースMUをリードしています、フローリン・ローターです。現在はシアトル在住ですが、ヨーロッパ出身でスウェーデンやノルウェーなどで仕事をしてきました。現在はWX(ワークプレース・エクスペリエンス)担当で、過去にはアバナードでCTIO(Chief Technology Innovation Officer)をしていました。きちんとビジネスにインパクトがある形で、お客様の環境でイノベーションを起こせるように取り組んでいます。

−−アバナードはWXをどのように考えていますか?

 これまでワークプレースに関しては「新しいテクノロジーを導入しましょう」という意味合いがありましたが、今ではきちんとビジネスにインパクトがあるように導入するように顧客企業をお手伝いしています。

 アバナードがマサチューセッツ工科大学情報システム研究センター(MIT CISR)と共同で実施した調査によると、良好な従業員体験を提供できている企業では、イノベーションが2倍、顧客満足度も2倍、利益は26%増という結果が出ています。

ワークプレースは企業の競争力の新たなフロンティア

ワークプレースは企業の競争力の新たなフロンティア

−−WXについてもう少し詳しく教えてください。

 カスタマーエクスペリエンス(CX)はよく浸透していますよね。お客様に興味を持っていただくところからはじまり、いろんなチャンネルを通じて連続的に心地よい体験をご提供するのがCXでした。これを同じマインドセットで従業員に提供するものがWXです(あるいはエンプロイーエクスペリエンス“EX”とも)。応募するところからはじまり、プロフェッショナルとして業務に携わる、パーソナルな領域で企業と関わるところなどで、いかにして従業員に連続的にいい経験を提供できるかを考えています。

−−実際にはどのような変化が起きていますか?

 2つの事例を紹介します。1つ目は全米2位の規模となる病院チェーン「Ascension」です。従業員は10万人ほどいます。全米各地に専門家がいて、癌に関する情報交換や治療方針について相談しています。これまでは定期的に会合を持っていましたが、オンラインで診断データを共有し、会議ができるようなプラットフォームを提供しました。なかにはAIや処理の自動化も含まれます。新しいプラットフォームを導入したところ、これまでより4倍の患者さんを診ることができるようになり、患者さんの生存率も高まりました。

 2つ目は200年ほどの歴史がある製造業の企業です。IoTやDXにも取り組み、製品よりもサービスに目を向けるなど先進的な取り組みをしています。それでも若い世代は(老舗の製造業よりも)Facebookなど新興企業に目が向きがちで、いかに人材を獲得するかが課題でした。

 そこでエンプロイージャーニーのためのアプリを作りました。まずは応募するところからはじまり、採用面接の当日には「緊張しているでしょうから、コーヒーでもいかがですか」とスターバックスのクーポンを送付したり、採用が決まったら「あなたの上司や同僚はこんな人たちです」と紹介したり、初日の昼には同僚とランチに行けるように案内して、会社に馴染めるようにします。

 入社面接では、応募者が複数の企業にかけあっていることは承知の上で「面接であなたのこんなところがよかったです。(これから別の企業面接があるなら)こんなところは改善するといいかもしれません」とアドバイスをすることもあります。採用が決まったら、入社の手続きもアプリからペーパーレスでどんどん進めていきます。

 このようにお客様に対してのサービスを従業員にもおこなうことで、リクルーティングの費用を削減したり、トレーニングが効率的になり、離職率が下がるという結果にもつながっています。

−−新入社員以外ではどんな効果がありますか?

 WXはコミュニケーションだけではなく、従業員がやるべきアクションも含まれます。特に中間管理職は多くの雑務を抱えています。高度でクリエイティブなことをしなくてはならないのに、形式的なドキュメント作成や承認作業などに追われているのです。こうした業務に価値がないとはいいませんが、アプリで日々のタスクはできるだけ軽減して、頭と手を使って考えることに時間や労力を割けるようにしています。

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競争優位で注力するのは製品から顧客へ、そして従業員へ

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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