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天才投資家ピーター・ティール氏来日、SOMPOホールディングスと組み日本でパランティア社を設立


 シリコンバレーの著名投資家、ピーター・ティール氏が来日。SOMPOホールディングスと共同で、氏が共同設立者であるパランティア・テクノロジーズの日本支社を設立すると発表した。SOMPOホールディングスが保有する大量の「リアルデータ」を用いたデータ解析事業に乗り出す。

テクノロジーだけでなくティール氏の哲学に関心─SOMPO HD櫻田氏

ピーター・ティール氏

ピーター・ティール氏

 SOMPOホールディングス株式会社とPalantir Technologies Inc.(パランティア・テクノロジーズ、以下パランティア)は、ビッグデータ解析ソフトウェアプラットフォーム事業を展開する「Palantir Technologies Japan株式会社」を共同で設立し、日本において事業を展開することに合意した。2019年11月18日にパランティアのピーター・ティール氏、SOMPOホールディングスのグループCEO 代表取締役社長の櫻田謙悟氏、同社CDO 執行役常務の楢崎浩一氏の3名が会見を開いた。

 ピーター・ティール氏はシリコンバレーの起業家。ペイパルの共同創業者であり、イーロン・マスク氏らと共に「ペイパル・マフィア」と呼ばれ、Facebookを創業から支えた天才投資家として知られ、トランプ大統領を早期から支持し大統領の政策顧問を務めたことでも有名。そしてCIAやFBI、米国の国防産業をクライアントに持つビッグデータ解析企業のパランティアは、現在最も注目される米国のユニコーン企業。世界25カ国で政府機関、大企業向けのビッグデータ解析プラットフォームを提供する。その目的は、「リスク対策」(サイバーセキュリティ、社内不正監視、マネーロンダリング防止等)や「業務効率化・革新」(計画策定、ヘルスケア研究開発、出荷最適化)などだ。

 SOMPOとパランティア社との出会いは昨年の9月にシリコンバレーのパランティア社を訪れた時からだという。

「ビッグデータ解析を目の当たりにし彼らの技術に衝撃を受けるとともに、率いているピーター・ティール氏とCEOのアレックス・カープ氏が哲学を背景にしていることに強い関心を持った」と櫻田氏は言う。現在の日本が抱える社会課題を考える時、こうした哲学に基づく知見や考察が重要になるのだという。(著者注:ピーター・ティール氏とアレックス・カープ氏はスタンフォード大学の同窓。ティール氏は比較文学・哲学者のルネ・ジラール、カープ氏は社会哲学者のハーバーマスの門下)

 SOMPOホールディングスは、国内外の損害保険事業、生命保険事業に加え、介護・ヘルスケア事業をおこなっており、こうした事業の現場から生まれる「リアルデータ」を保有している。「リアルデータ」とはインターネット上からは獲得できない個人・企業の実世界での活動についてセンサー等により取得されるデータを指す。これらのデータを社会のためにどう活用し、価値に変えていくかについては、まだまだ答えは出ていないという。「言うならば宝の持ち腐れ。これを本当の宝に変えたい」(櫻田氏)

 世界一のスピードで高齢化が進展する日本は課題先進国、その課題解決に本気で取り組むための企業が「パランティア・テクノロジーズ・ジャパン」であり、あえてSOMPOの名前は冠しなかったという。

「パランティア=水晶玉」が日本進出する「3つの理由」

 続いてピーターティール氏が登壇し短めのスピーチをおこなった。

「パランティアとは『指輪物語』に出てくる“水晶玉”のこと。今を理解し、未来を見通すことができる。その役目はデータを集めそこから知恵や洞察を得ることだ。そのためには、ビッグデータだけではなくスモールデータも重要。2004年から米国の企業や政府とも仕事をしてきたが、日本は大事な市場と考えSOMPOとのジョイントに達した。」(ピーター・ティール氏)

 ティール氏は今回の日本市場への進出の目的として、以下の3つをあげた。

1)SOMPOとのジョイントベンチャーを通じて、パランティアのテクノロジーを日本に提供し、日本のデジタル時代の技術に貢献すること。
2)日本から“学ぶこと”──高齢化社会の進行において他の先進国より一歩先を行く日本の課題にSOMPOと共に取り組み、高齢化を解決するテクノロジーの活用を目指す。
3)今回のジョイントを通じ、米国と日本との国家レベルでの関係をさらに強化していくこと。

民間向けの「ファウンドリー」と公共向けの「ゴッサム」──2つのプラットフォーム

 新会社のCEOに就任したのSOMPOホールディングスのグループCDOも務める楢﨑氏が製品を紹介した。パランティアのソフトウェア「ファウンドリー(Foundry)」と「ゴッサム(Gotham)」だ。

 「ファウンドリー」は民間セクター向け。社内外のデータを統合・分析し、経営判断と事業成功のための知見を導出し、日本企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する。「ゴッサム」は公共セクター向け。公共データを統合、管理、保護、分析し、公共サービスの生産性を上げることが狙い。

「両者は似ているが、データの公共性や活用のガバナンスについて大きく異なる」と楢崎氏は言う。

 事例としてはクレディ・スイス証券を紹介。同社はパランディアのプラットフォームを使い顧客情報、取引先記録、従業員情報を統合的に管理し、分析と異常検知をおこない、マネーロンダリングに活用。これまでの20分の1の時間で検知率を倍増させたという。

 またエアバス社では、製造プロセスデータ、運行・整備データを分析・活用し、90社6000の航空機体をプラットフォーム上で運用管理をおこなうことで、航空機の遅延を減少させ、事業のコストとしては13-14億円を削減したという。

 今回の共同出資のスキームは、資本金108億円をパランティアとSOMPOが50%比率で共同出資。代表取締役はSOMPOの楢崎浩一氏とパランティアCEOのアレクサンダー・カープ氏が就く。従業員はパランティア、SOMPO両社より派遣・出向となり、当面の売上目標は1080億をめざす。

 会見後の質疑応答では、SOMPOが保有するリアルデータに対する質問もあった。楢崎氏によれば「リアルデータは発信源が特定できるもの。GAFAの得意とするバーチャルなデータとは異なる日本の得意領域」だという。さらに個人情報の扱いに関する危惧について、ティール氏は「哲学的な原則としてプライバシーを尊重する」と述べ、プライバシーの重要性を強調した。

(左から)SOMPOホールディングス グループCDO執行役常務 楢﨑浩一氏、ピーター・ティール氏、SOMPOホールディングス グループCEO執行役社長 櫻田謙悟氏

(左から)SOMPOホールディングス グループCDO執行役常務 楢﨑浩一氏、ピーター・ティール氏、SOMPOホールディングス グループCEO執行役社長 櫻田謙悟氏

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、EnterpriseZineをメインにした取材編集活動、フリーランスとして企業のWeb記事作成、企業出版の支援などもおこなっている。 ...

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