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「ALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO 2019」#02 SaaSの成功の鍵「イネーブルメント」とは何か、R-Square山下氏と前田ヒロ氏語る

edited by Operation Online   2019/12/25 07:00

 B2Bビジネスでは、デジタル化の進展に伴う顧客ニーズに対応するため、プロダクトと販売方法が大きく変わろうとしている。その変化に追随し、ビジネス成果を最大化するために役立つ施策として期待されているのがイネーブルメントである。この記事では、11月7日に開催された「ALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO 2019」でイネーブルメントをテーマに取り上げたパネルディスカッション「エンタープライズSaaSを実現するEnablementの作り方」の模様を紹介する。

イネーブルメントとは何か

株式会社R-Square & Company 代表取締役社長/共同創業者 山下貴宏氏<br />  モデレーター:ALL STAR SAAS FUND Managing Partner 前田ヒロ氏

株式会社R-Square & Company 代表取締役社長/共同創業者 山下貴宏氏
モデレーター:ALL STAR SAAS FUND Managing Partner 前田ヒロ氏

前田:イネーブルメントが何かを知る人はまだ少ないと思います。簡単な解説からお願いできますか。

山下:日本語訳が難しいのですが、平たく言えば「成果起点で営業人材を育成すること」です。組織として達成したい成果を起点に、どんな行動を取れば成果が得られるのか。そのために必要な知識やスキルはどんなものかを逆算して考え、現状とのギャップを埋めるための育成施策を展開します。その後、実際に行動が変わり、求めた成果が得られたかを検証するまでの一連のプロセスを確立することが理想です。とはいえ、多くの企業では人事や営業で個別最適の施策を展開しており、会社全体として見たとき、一貫性のある育成プログラムを提供できていません。この理想と現実のギャップを埋めるため、テクノロジーを使い、営業の成果と成果が連動しているかをデータで検証しながらPDCAサイクルを回すという人材開発の仕組みがイネーブルメントです。

前田:営業組織には「2:6:2の法則」があるとも言われますが、6割の人たちのパフォーマンスを高めることに役立ちそうですね。スタートアップとエンタープライズで、イネーブルメント施策に違いが出てきますか。

山下:それぞれにテーマが異なります。スタートアップはプロダクトの数は少ないものの、成長スピードに合わせ、多くの人材を採用して早期に戦力化しなくてはなりません。ですから、テーマはオンボーディングになります。一方で、エンタープライズはもっと複雑で、固有の特性に合わせて施策を展開する必要があると考えています。その特性は主に3つあります。第一に複数のプロダクトがあること。第二にターゲット企業内のステークホルダーが多く、対応しなくてはならないニーズが複雑であること。第三に営業担当者のバックグラウンドや売り方がバラバラであることです。「お客様のニーズが変わっているのに、営業が変われていないこと」を課題と認識しているお客様がエンタープライズには多いと感じます。

図1:スタートアップとエンタープライズのイネーブルメントテーマの違い 出典:R-Square &Company

図1:スタートアップとエンタープライズのイネーブルメントテーマの違い 出典:R-Square & Company

エンタープライズではフェーズ定義の見直しが有効

前田:エンタープライズでイネーブルメントに取り組むときはどこから始めますか。

山下:検討プロセスは3段階で進めます。最初の論点が、営業機能を「案件創出」と「提案受注活動」に分けるかどうかです。「The Model」的にインサイドセールスとフィールドセールスを分けるかどうかですね。「営業プロセスの最初から最後までをやってこそ一人前の営業」という価値観の会社が多いのですが、顧客とプロダクトが複雑化しているエンタープライズでは、それはスーパーマンに相当します。分けない場合はスーパーマンを増やすプログラムを、分ける場合は「案件創出」と「提案受注活動」で別々のプログラムを作ることになりますが、プロダクトが複数になると、必要な知識も違うので、大抵の場合は「分けましょう」と提案をすることが多いですね。

前田:自分で最初から最後までやるのは大変なことです。特に大きい商談ではクロージングに集中した方が合理的です。分けた後の次のステップでは何を検討しますか。

山下:「顧客の意思決定の流れ」に沿って「営業フェーズ定義」を見直すことです。よくあるのが、営業がやったことに合わせて営業プロセスを定義しているケースです。見積書を提出したからといって、意思決定が進んでいるとは言えませんよね。むしろ顧客の予算獲得が承認されたかどうかの方が重要です。顧客の意思決定のプロセスが進むにつれて、フェーズが進んだと考える活動管理をすることが実態に則しているのです。

前田:目安としていくつにフェーズ分けをするのでしょうか。

山下:フェーズ定義を間違えると、成果としての売上予測の精度や育成施策のズレにもつながるので、とても重要な論点です。ターゲット業界にもよりますが、5〜8段階(注:セールスフォースは8段階で知られる)にすることが多いです。

フェーズを分けた後は、商談期間や受注率の推移のような指標を分析し、ハイパフォーマーとそうではない人のギャップが大きいところに着目してテコ入れの施策を検討します。仮にイネーブルメントにリソースを割けなくても、現在のフェーズ分けを見直すだけでも成果の改善につながると思います。また、フェーズ定義は一度やれば終わりではなく、プロダクトが増えたり、ターゲット業界が変わったりした場合に見直すべきです。

前田:検討プロセスの最後は何でしょうか。

山下:「営業実績データを基に育成テーマを決めて、1・2個の実践プログラムを作る」ことです。例えば、ハイパフォーマーとそうではない人に受注単価に違いがあるとしたら、初期フェーズで仕掛けを作るための「トレーニングが必要」あるいは「マーケティングイベントの実施が必要」などの示唆を得ることができます。

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著者プロフィール

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

     IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

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