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アクセンチュアCEO、ジュリー・スウィート氏が語った「成功の共有」というビジョン


 2020年2月20日、アクセンチュアのCEOジュリー・スウィート氏が来日し会見を開いた。ここ数年デジタルテクノロジーにシフトし飛躍的に成長してきたアクセンチュアだが、中でも日本市場の寄与は大きいと語り、次なる10年の目標として「成功の共有」というビジョンを掲げた。

アクセンチュア 最高経営責任者(CEO)ジュリー・スウィート氏

アクセンチュア 最高経営責任者(CEO)ジュリー・スウィート氏

デジタルはすべての場所に(Digital is Everywhere)

 アクセンチュアで初の女性CEOに就任したジュリー・スウィート氏。2015年から北米地域でのCEOを努め、アクセンチュアの投資戦略と成長戦略の中核を担うとともに、最高コンプライアンス責任者としての役割や、大型の取引やM&A戦略を成功させてきた実績を持つ。その経歴からはカリスマ的な女性像を想像しがちだが、笑みを絶やさず柔らかなその表情からは、まさにダイバーシティやインクルージョンの時代の新しいリーダー像を感じさせる。

 2019年9月の就任後、スウィートCEOは世界中のアクセンチュアのリーダーたちと、今後のビジョンや方向性について語りあい、「価値、信頼、顧客」についての考えを深めたという。この日のスウィートCEOが語った内容は、テクノロジーやビジネスの紹介ではなく、その基底にあるアクセンチュアのフィロソフィーに関するものだった。

 はじめにスウィートCEOは、自分の人生を考える時の両親の影響について語った。彼女自身は決してエリートの家庭で育ったわけではなかった。大学に進学せずに生計をたてるために働いた父親と、子育てを終えてから大学に入学した母親から、勤労精神と学ぶことの情熱を受け継ぎ、「自分の夢のためには、何事も恐れてはならない」という確信をもったという。「今後多くのビジネスが、ディスラプションで消えていく。つねに自己満足せずに、学び続けることを若者に伝えたい」と語る。

 ここ数年、急速に伸びているアクセンチュアだが、マイルストーンは2013年。この年アクセンチュアは、「TECHNOLOGY VISION」という年次レポートで「すべてのビジネスはデジタルになる」と宣言した。そこからアクセンチュアのデジタルへのシフトがはじまった。

 今では、「デジタルトランスフォーメーション」はすっかり知れ渡った言葉だが、この時期にはこの言葉に対してはまだ疑問視する声もあったという。デジタルに舵を切って、飛躍的な成長を果たしてきたアクセンチュアだは、この2020年は新たな転換点だとスウィートCEOはいう。デジタルは、もはや当たり前であり、すべてのビジネスやサービスに組み込まれている──「Digital is Everywhere」 の時代であると語る。

「2020年はデジタルとテクノロジーの新たなポテンシャルを提供する次の10年の始まり。 全社的な変革が求められている。スピード、規模、価値が問われる」(スウィートCEO)

次の10年は「成功の共有」へ

アクセンチュア 最高経営責任者CEO ジャンフランコ・カサーティ氏

アクセンチュア 成長市場担当 最高経営責任者(CEO) ジャンフランコ・カサーティ氏

 スウィートCEOへの聞き手として成長市場担当CEOのジャンフランコ・カサーティ氏も登壇した。カサーティ氏は、「アクセンチュアは成功している。だからこそ変革が必要である」と語り、「そのために必要な次世代の成長の条件は何か」をスウィートCEOに聞いた。

 これについてスウィートCEOは、「アクセンチュアの歴史の中で、基本的な原則は変わらない。顧客にフォーカスすること、人にフォーカスすること、そして変化への勇気を持つこと」だと答える。顧客や人々必要としているものにいつも耳を傾け、チーム、組織を変化させていくことが成長の源泉だという。

 そうした変化への取り組みして、アクセンチュアの事業領域の再設定がおこなわれた。デジタル、クラウド、そしてセキュリティを新たな成長領域とするのだという。とりわけ、以前は少なかったセキュリティ分野の事業比率を、ここ数年で急速に高めコアの事業のひとつとしたことなどをあげる。ブロードコムからのシマンテックの買収もその一環であると質疑応答の場で語った。

 さらに「Digital is Everywhere」 の時代のゴール(目的)は何か。この問いに対しては、「Shared Success(成功の共有)」という言葉をあげた。つまり、ビジネスを成り立たせるための手段としての「エコシステム」ではなく、顧客、社員、パートナー、ステークホルダーと成功を共有すること、その先に共に価値を生むことを目的にしているということだろう。

日本の「プロジェクト・プライド」を評価

アクセンチュア株式会社 代表取締役社長 江川昌史

(左より)アクセンチュア株式会社 代表取締役社長 江川昌史氏/
アクセンチュア 最高経営責任者(CEO)ジュリー・スウィート氏/
アクセンチュア 成長市場担当 最高経営責任者(CEO) ジャンフランコ・カサーティ氏

 こうした変革のひとつとして、組織文化の変革がある。アクセンチュアの組織変革については、日本のアクセンチュアが実践した取り組みが代表的な例だとスウィートCEOは述べ、アクセンチュア日本法人の江川昌史社長の業績を紹介した。

 その一つが、日本のアクセンチュアが実施した組織文化の改革だ。2015年にスタートした「プロジェクト・プライド」というこの改革は、当初「ダイバーシティ・チャレンジ」「リクルーティング・チャレンジ」「ワークスタイル・チャレンジ」の3つのテーマで進められ、成果をあげた。それ以前のアクセンチュアは、採用方面では、「激務と長時間労働の会社」という噂が浸透し、体力勝負かつ男性中心のカルチャーだったという。

 江川氏の社長就任と同時にスタートしたこのプロジェクトは、コアバリューを再定義し、働き方改革とダイバーシティへの取り組みをおこなうというもの。今では政府の指導のもと「働き方改革」に各社が着手しているが、その先鞭をつけたといえる。その成果としてもっとも顕著なものは、女性比率の向上だ。現在アクセンチュアは、男女比がほぼ同比率。これは日本も同様で、女性社員の数が増えたという。

 さらに特筆すべきは、その改革と同時に業績が向上したことだ。売上の比率は公表されていないが、ここ数年の日本のアクセンチュアの成長はグローバルでの貢献度が高いとスウィートCEOは語る。今回の来日の目的として「日本での取り組みと日本の顧客から学ぶこと」を強調し、日本のアクセンチュアの取り組みを讃えた。

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在は、EnterpriseZineをメインにした取材編集活動、フリーランスとして企業のWeb記事作成、企業出版の支援などもおこなっている。 ...

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