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急増するテレワーク、オンラインセミナー、各社の取り組みから見えてきた課題

edited by Operation Online   2020/03/19 12:00

 新型コロナウイルス問題によってテレワークやオンラインセミナーなど導入が急速に進んでいる。こうしたツールやサービスの提供企業に、企業の問い合わせの動向や対応や、浮上してきた課題について、ブイキューブ、TDMテレワーク実行委員会、シャノンの関係者に話を聞いた。

「すぐに始めたいが制度がない」──ガイドラインを提供するブイキューブ

代表取締役社長 間下直晃氏

ブイキューブ 代表取締役社長 間下直晃氏

「テレワークに関する問い合わせは多い日で従来の10倍近い日もあり、過去にないペースだ」と語るのは、ブイキューブの間下社長。同社はWeb会議・TV会議のツールやサービス、クラウドでの会議システムなどを提供している。新コロナウイルス問題の発生を期に、問い合わせが殺到しているという。

 近年の働き方改革によって関心は高まってきてはいたが、これまでの「数ヶ月で導入を検討」から「今すぐ導入したい」という喫緊のニーズに変わった。企業にとっては、社員の健康・安全を守ることはもちろんだが、「感染者を出すことが大きなリスク。そのため在宅勤務や時差通勤を推奨する企業が増えた」からだという。

 問い合わせをしてくる部門は、大企業であれば情シス部門、中小企業は、営業部門や管理部門、社長などさまざま。担当者の多くは、SkypeやLINEなどの動画ツールの経験はあるものの、Web会議やテレワークについての経験はないという。

「何から始めればよいかという質問がほとんど。そういう方々には、まず無償でテレワークに必要な規定関係やルールを提供する」(間下社長)

 企業によっては就業規則などは急には変更できない場合もあるが、当面の暫定運用であったり、今後のテレワーク規定づくりの雛形として活用してもらう。このテレワーク規定は、「服務規律」、「勤務時の始業・就業連絡」、「対象者」、「対象業務」、「労働時間」、「連絡体制」などからなる。

 とりわけ情報通信機器の利用や管理については、一般的な規定よりも現状の課題に即したものとなっている。会社の指定するコミュニケーションツールの利用に関する留意事項、第三者の閲覧・コピーの防止、セキュリティや情報管理などについて記載されており、相談のあった企業に提供する。またブイキューブでは、この規定と並んで「働き方ガイドライン」も公開している。

 ブイキューブでは自社のWeb会議システムを、テレワーク用のツールとして提供している。自社の「V-CUBEミーティング」など、テレワークやWeb会議のツールを販売する一方で、Zoomなどを自社の製品以外と組み合わせてソリューションとして提供するケースもあるという(同社はZoomの販売代理店でもある)。

 とくに好評なのは、Web会議で通話中のノイズを消すツール「Krisp」だという。これはZoom、Skype、Google Hangout、V-CUBEなどのあらゆるWeb会議ツールで使え、環境音やノイズを軽減するアプリケーション。入力された音をディープラーニング技術により人の声と騒音に分解し、人の声のみを送受信できるようにする独自技術を用いている。今回のコロナウイルスをきっかけに、ブイキューブでは無償提供をおこなっている。

「一緒に働いている感」と「ホウレンソウ」問題

 こうしたツールやサービスへの問い合わせは多いものの、最大の課題は、テレワークに対応する企業文化だと間下社長は語る。

 社員にとっては、上司や周囲から正しく評価されるかという心理的な不安があり、また上司や管理者にとっては、部下の業務をどう管理するかという問題もある。これに対しては、間下社長は「各自のジョブディスクリプションが定められていて、成果による仕事への評価の仕組みがあれば、そもそもサボっているかと心配する必要はない」という。さらに「一緒に働いている感」や「ホウレンソウ」、「社員の仕事の様子を知る」といった問題には、Web会議とチャットツールを同期/非同期で併用することが有効だという。

「チャットツールでは、ちょっとした息抜きや無駄話も必要だが、高齢者には慣れない人や抵抗する人もいる」(間下社長)

 年配になると、Slackなどのチャットツールを常に起動せずメールと同じく非同期で使っていたり、儀礼的な会話のやりとりになってしまうのだという。

「テレワークの推進には制度、場所、ツール、文化の4つが必要。今回の新コロナウイルス問題で、仕組みは否応なく導入され、やってみたら出来たという実感を多くの企業が持つだろう。課題は企業文化だが、こちらは徐々に変えていくしか無い」(間下社長)

「子供と一緒にどう働くか?」──TDMテレワーク実行委員会の提言

TDMテレワーク実行委員会 緊急相談会

TDMテレワーク実行委員会 緊急相談会

 今回の小中高の臨時休校によって、子供のいる環境で仕事をすることになった人も多い。かねてからテレワークに積極的に取り組んできたIT関連企業からなるTDMテレワーク実行委員会(以下TDM実行委員会)では3月10日に「緊急テレワーク相談会」を開催し、テレワークに関する相談を受け付ける相談窓口を開設した。

 会議は事務局であるアステリア本社でおこなわれたが、オンラインでも同時に開催されテレワーク導入企業の担当者やメディア関係者が参加。「子供と一緒に仕事をする環境」に関する意見交換がおこなわれ、TDM実行委員会では以下の3つの提言を発表した。

1. 長時間子供を一人ぼっちにさせない工夫を考えよう(家族のサポートの活用、友達とのオンライン通話)

2. 自宅にこもると運動不足になりがちなので運動の機会を作ろう(昼食後の縄跳び、親と一緒に体操する)

3. 機密事項もあるのでテレビ会議や大事な電話は別の部屋で(家族も含めて機密事項は伝わらない工夫を)

子連れテレワークの様子 TDMテレワーク実行委員会 2019年7月

子連れテレワークの様子 TDMテレワーク実行委員会 2019年7月

「紙とハンコのために出社する」問題

 高齢者や子供がいる家庭の中で、仕事をする環境を整えるのはけっこう難しい。TDM委員会のメンバーからも、「夫婦で書斎利用時間を分ける」「ウォークインクローゼットを使う」「Web会議をしているところを見られるのは、家族といえどもセキュリティ上問題」などのコメントが出た。

 一方、今回の「子連れテレワーク」にはプラスの面もあるという。会議に実際の親子で参加した松浦真弓氏(アステリア)は「母親がどんな仕事をしているかを息子に知ってもらう良い機会だった」と語る。

 またTDM実行委員会の参加メンバーは企業の広報や管理部門などが多いが、そうした人の中には「テレワークだけで仕事が完結しない」という人も多い。近年、管理業務の多くもクラウド化が進んでいるものの、取引先の相手企業が書類の「原本文化」にとどまっているからだ。「紙とハンコのために会社に行かなければいけない」という問題があるのだという。

 またテレワークにおけるコミュニケーションの円滑化の工夫として「3時間おきのチャットでの雑談タイム」「朝礼などをオンラインミーティングでおこなう」などの例があげられた。

オンラインセミナーへの転換は「災い転じて福」?

 テレワークとならんで、今回の新コロナウイルス問題で急速に進んだのは、セミナーやイベント、プレス会見、研修などのオンライン化だ。

 前述のブイキューブはオンラインでのイベント配信を支援するサービスを提供しているが、こちらも急激に引き合いが増えた。特に、リアルでのセミナーの実施とオンラインでの配信をハイブリッド形式のニーズが高かったという。しかし現状では、オンラインセミナーを始める企業やイベントの事業者のノウハウがまだ定着していないことが問題で、トラフィックの増大などに対処できず、回線が途切れるなどのトラブルが多いのも事実だ。こうした課題に応えるため、ブイキューブは撮影のクルーから配信システムまでをセットにしたノウハウを提供している。

「今回多くの企業がB2Bのマーケティングイベントをオンラインで開催することで、成果を実感いただけた。オンラインだと視聴状況が把握できる。視聴者の属性情報と合わせれば提供リードの成約率も高くなる。この流れはこの後もさらに本格化していくだろう」
(間下社長)

 セミナーでは、シャノンも同様にオンライン化への対応が進んだという。シャノンでは同社のマーケティングプラットフォームを利用する企業に対してYouTubeの動画配信システムの利用を提案。

 参加者の申込み管理、視聴URLの案内やアンケートの管理といった「人の管理」はシャノンでおこない、URL作成、配信、ライブ視聴者数や動画の再生回数などの「視聴の管理」はYouTube Liveでおこなった。一人ひとりに紐付いた視聴管理はできないが、無料のYouTubeを利用することで、大きな投資はできないが、オンラインイベントをとりあえず実施したいという企業のニーズに応えた。

シャノンとYouTube Liveによるオンラインセミナー開催方法

 オンライン化により、申込者、参加数は増え、以前は数十名程度を想定していたセミナーも200名規模で出来るようになった。「視聴者数が増えたことと、参加者の質の見極めが今後の課題」だと、シャノンのマーケティング部部長の村尾慶尚氏は語る。

 オンラインセミナーの場合、リアルタイムの「ライブ視聴」と、録画したコンテンツを後から見る「オンデマンド視聴」がある。シャノンの実施した調査によると、ライブ視聴の平均時間に比べ、オンデマンドの平均視聴時間は3分の1という結果になった。

「オンデマンドだから後から視聴者も増え効果があるとは言い切れない」(シャノン 村尾氏)

 この間の経験と実績を踏まえシャノンでは来場者管理と視聴者管理を連携させ、今後もリアルタイムで配信するオンラインセミナー(同社ではウェビナー)に注力していくという。

 テレワーク、オンライン会議、オンラインセミナーの流れは止まらないだろうというのが、各ベンダーの共通意見だ。「働き方改革」や「デジタルトランスフォーメーション」という言葉による後押しで、ゆっくりと進んできた企業の取り組みが、不本意ながらも新コロナウイルスの問題で半ば強制的に進められるようになったといえる。企業としては、この流れをプラスの方向に転じていくことが必要になるだろう。



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