機械学習の活用やデジタル変革への取り組みがデータベースの新規需要を生み出す
ーー 2018年度は、国内RDBMS市場が前年比で大きく成長しています。成長の背景には、どのようなものがあったと考えられますか。
平井氏:2018年から2019年にかけSaaSのRDBMSが大きく伸びていますが、実はパッケージ版もそこそこ伸びています。パッケージについては、Windows Server 2008のサポート終了に伴うサーバーの移行で、SQL Serverの更新が増えたことが数字を押し上げています。とはいえ、オンプレミスでは他にOracle Databaseも伸びています。
実はリレーショナルだけでなく、データレイクの需要などからNoSQLデータベースの利用も増えていると考えています。しかし、NoSQLデータベースはオープンソース・ソフトウェアのものが多く、売り上げベースの市場調査の数字には表れてきません。
NoSQLデータベースはPoCなどで使用し、そこから本番運用に入るとガバナンスをどうするかといった問題が発生しがちです。そのタイミングで改めて検討し直し、RDBMSでもさまざまなデータタイプをサポートしていることから、結果的にNoSQLではなく使い慣れたリレーショナルを採用する動きもあります。
また今後機械学習などを本格的に活用するようになると、その際の学習データの扱いをどうするかという問題が発生します。PoCレベルではPCサーバーでファイルベースのデータを使いちょっと試す、あるいはAmazon S3やGoogle Driveにデータを置き試すのでも良いのですが、本番で大量データを扱うとなればリレーショナル・データベースで管理しようとなります。今では多くのリレーショナル・データベースに機械学習エンジンが搭載されており、機械学習もリレーショナル・データベースを使って運用しようというのも増えています。
もう1つRDBMSの成長を牽引しているのが、デジタル変革です。デジタル変革のために部門を跨がって横串にデータ分析を行いたい。そうなれば、データウェアハウスが事業部ごとに分かれているといった環境では上手くいきません。そうなると、改めてデータ統合をしましょうとなります。IT投資動向の調査でもデジタル変革のための取り組みでは、部門横断型のデータ活用インフラの整備を推進しているとの回答が、人材の採用に続いて多くなっています。
デジタル変革にまじめに取り組もうとすると、データのサイロ化がボトルネックになります。そのため粒度が多少粗くても良いので、グループ統合のデータウェアハウスを作る動きがあります。この場合は巨大なデータベース環境を別途作るよりも、ETL(Extract/Transform/Load)やEAI(Enterprise Application Integration)で緩やかに連携させる方法が採用されているようです。
あるいは会計システムのPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)のデータだけでも、1ヶ所に集め分析できるようにする。こういったデジタル変革に伴った動きも、RDBMS市場を牽引しています。これはある意味、以前から取り組んだほうが良かったけれどもなかなか真剣に取り組めていなかったことの、つけが回ってきているとも言えます。
SQL Serverの乗り換え以外でも、RDBMSの新規導入の需要があります。この需要は、ここ数年落ちていません。ビッグデータ活用がPoCから本番に移行する、デジタル変革のためのデータ活用インフラを整備するといった需要が、今後も大きなところを占めるでしょう。新規需要については、今後はSaaSが伸びパッケージは落ちてくるかもしれません。