SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

IT Initiativeスペシャル

ビジネスモデルのオープン化が企業のイノベーションを促進する~ヘンリー・チェスブロウ氏


企業の知財(IP)は、従来は特許や商標の保護・活用という観点から捉えられてきたが、企業のイノベーションにとって、IPは重要な課題であり、IPのマネジメントがビジネスモデルに大きな影響を与えている。 「オープン・イノベーション」の重要性を唱えるヘンリー・チェスブロウ教授にお話しを伺った。  

知財戦略時代のイノベーションにはビジネスモデルが要となる

ヘンリー・チェスブロウ(Henry Chesbrough)氏
ヘンリー・チェスブロウ(Henry Chesbrough)氏

―日本では、著作権保護の制約があり、検索ビジネスが立ち上がらなかったという事実があります。日本での検索エンジンは、サーバーを海外に置いて回避してきました。ここへきて、著作権保護法の見直しがようやくはかられ、修正案もほぼ現実的になってきたのですが、やはりここ数年のインターネットのビジネスを見る限り、日本の法的環境の制約は大きかったといえます。企業のIP(Intellectual Property:知的財産)戦略について、オープンビジネスイノベーションという観点からぜひお話をうかがえればと思います。

 現在では、イノベーションを生むのは、技術だけではなくビジネスモデルです。イノベーティブなビジネスモデルをマネジメントすることが、戦略的なIPのマネジメントであるというのが私の主張です。

 IPをマネジメントするといった場合、特許や商標などをどのように保護するかという考え方が一般的です。それは日本だけでなくほとんどの国でも同様です。特許とは、それを生み出した人に公開する対価として、利益を得る可能性を認めるという社会的な合意です。IPを管理するということは、従来は弁護士や特許事務所の仕事であり、企業の知的財産管理は、閉鎖的な仕事でした。

 私が「オープンビジネスモデル」という考え方で伝えたいのは、IPを多様にマネジメントすることを通じて、イノベーションを促進するという新しい方法です。

 IP戦略は、価値を創出するうえで重要です。そのオープン性と活用、保護を適正にコントロールすることが重要な戦略となります。

IPと市場拡大のエコシステム

 1つの方法として、IPを贈与してしまうという考え方があります。標準化を促すために、IPを無償で提供してしまうのです。自分たちだけが使えるようにIPを保護するより、IPを公開することで、多くの人がその技術を利用することになります。たとえ競合企業がIPを用いたとしても、スタンダード化することのメリットは大きい。

 かつて、ソニーはAIBOという非常にすぐれたペットロボットを製品化しました。非常に革新的な製品だったので、生産が終了したことは残念です。ある人物が、AIBOを音楽にあわせて踊らせたり、ワイヤレス機能を高めたりするためのソフトウェアのアップグレードを公開したところ、ソニーはデジタルミレニアム著作権法(DMCA)を侵害しているとして訴えました。ソニーのとったこのような行動は、AIBOの熱心なコミュニティの反発を招き、ソニーという企業の革新的な企業イメージを著しく傷つけたと思います。

 ニンテンドーDSやPlayStation 3のようなビデオゲームのビジネス業界でも、ハードウェアのIPに対してはクローズです。ただPS3などでは、ソフトウェアの開発者コミュニティによるモディフィケーション(MOD)が盛んです。ニッチな企業の戦略として、PS3をさらにパワフルにしたり、エキサイティングにしたりするパワーユーザー向け製品が登場することで、ソフトの市場はますます拡大し、ゲームソフト市場の「エコシステム」が形成されるでしょう。マイクロソフトも、Xboxの開発者のカンファレンスや交流の場を通じて、さらに積極的に動きはじめています。

次のページ
検索の著作権問題とモバイル業界

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
IT Initiativeスペシャル連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

ITイニシアティブ編集部(ITイニシアティブヘンシュウブ)

経営・ビジネス・ITをつなぐ実践情報誌「IT Initiative」編集部  

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/1352 2009/10/29 16:17

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング