コロナ禍の不確定な時代にさらに重要性を増すデータサイエンス
人類はこれまで、多くの危機を乗り越えてきた。氷河期を乗り越え人類として繁栄し、14世紀にはペストの流行で人口の22%が死滅するという危機も乗り越え、後のルネッサンスで再び繁栄する。さらに戦争を繰り返しながらもその危機から復帰し、様々な技術的な進化も遂げた。
「東西冷戦の中からは、耐障害性の高いネットワークとしてARPANETが生まれ、それが現在のインターネットにつながり、今やなくてはならないインフラです」と堀田氏。他にも危機が進化を加速した例はたくさんあると言う。
コロナ禍の危機は、何を与えるのか。1つがデジタル化の加速だ。様々なものがオンラインで行われるようになり、あらゆるところがデジタル化している。結果的に人と人のやり取りは加速し「物理的な制約からの解放も、コロナの正の部分です。明るい面を捉え、革新につなげることが大事です」と指摘、コロナ禍をチャンスに変えるために最も必要なのはデータサイエンスだと言う。
感染症対策そのものが、データサイエンスだ。感染が今後どう拡がるかをデータをもとに予測し、対策もデータに基づいて考えられる。「これほどデータサイエンスの分析結果が衆目を集め、人々が自らの行動を変えた事例は見たことがありません」と堀田氏。データサイエンスが人類史上最も社会にインパクトを与えているのだ。
データサイエンスの感染症への適用として、古くから感染症の流行を予測する数学モデル“SIR”がある。これは感受性保持者(Susceptible)、感染者(Infected)、免疫保持者(Recovered)の3つの状態から連立微分方程式で人口動態をシミュレーションするものだ。
18世紀の数学者であるダニエル・ベルヌーイが作ったモデルがもとで、今なお使われている。感染症だけでなくビジネスでも利用され、たとえばマーケティングの口コミで拡がる“Viral Marketing”は、ウイルス性を表す“Viral”からきており、シミュレーションにSIRモデルが使われている。