浸透してきたDX
DXという言葉があらゆる業種において使われるようになり、民間企業だけでなく官公庁でも押印廃止の動きやRPAによる業務効率化などに取り組む動きが見られます。特に、昨年から蔓延している新型コロナウイルス感染症を契機にデジタル化へと舵をきった企業も多く、2021年もDXをトレンドとして推進していく企業は増えていくことでしょう。
一方で、ZoomやSlackといったコミュニケーションツールを導入したり、前述したようなRPA導入による業務効率化を図ったりといった動きそのものはDXではなく、既存のやり方を改善するためのデジタル化といえます。多くの日本企業がGAFAに敗戦を喫したとされている中で、本当の意味でのDXを実現させるためには何が必要なのか。
その答えの1つを「スケールフリーネットワーク」から見出しているのが、今回紹介する書籍『スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX』です。
本書では、島田太郎氏と尾原和啓氏の両名によってスケールフリーネットワークを皮切りに、日本企業が新たなイノベーションを起こすための糸口が実践や体験を通して述べられています。
成功の鍵はスケールフリーネットワーク
GAFAによるイノベーションは大きなインパクトを世界中に与え、デジタル領域における日本企業の現状は、周回遅れのような状況にあるといっても過言ではないでしょう。しかしながら、インターネットを舞台にした戦いはGAFAが勝利をおさめる一方で、今始まっている第二回戦ではリアルが主戦場になり、これまで緻密にリアルのネットワークを整備してきた日本企業には大きな逆転のチャンスがあると本書は指摘しています。
そのためのキーワードとして掲げられているのが、スケールフリーネットワークという言葉です。
このスケールフリーネットワークとは、1998年に米ノートルダム大学でネットワークの研究をしていたアルバート=ラズロ・バラバシ教授らによって発見されたネットワーク構造のことだといいます。
バラバシ教授はウェブページについて、ページの作者が自身の興味や関心によって自由にリンクを張るために偏りの少ない、いわゆる「ランダムネットワーク」という構造をとると予想していました。しかしながら、調査をしたウェブページの80%は4つ未満のリンクしかなく、0.01%にも見たないウェブページに1,000以上のリンクが集中していたのです。このような圧倒的な偏り・格差のあるネットワーク構造をスケールフリーネットワークといいます。
スケールフリーネットワークの構造は、私たちの人間関係や、細胞の代謝とたんぱく質の相互作用など自然界にみられる普遍的な法則だといいます。
実は、スケールフリーネットワークをもったビジネスを展開しているのがGAFAであり、マネタイズよりもネットワークの構築に注力したからこそ成功したと著者は指摘しています。本書の中では、より具体的なGAFAの戦略も交えて紹介されており、スケールフリーネットワークの効力やGAFAのビジネスモデル成功の鍵を知ることができます。