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日本発SaaSの注目企業スタディスト 「Teachme Biz」で描く成長戦略とは スタディスト 鈴木悟史社長インタビュー

edited by Operation Online   2021/03/09 08:00

 Sansan、freeeに続くのはどこか? 日本のスタートアップ市場を盛り上げる存在としてSaaS企業が注目を集める。未上場企業の中でも有望株として期待されている1社がスタディストだ。同社の鈴木社長に日本発のSaaSとして成長を続けるTeachme Biz誕生の秘話と戦略を訊いた。

株式会社スタディスト 代表取締役 鈴木悟史氏
株式会社スタディスト 代表取締役 鈴木悟史氏

コンサルタント時代の学びをプロダクト開発に

――スタディスト起業に至るまでのご経歴を聞かせていただけますか。

 2010年3月にスタディストを設立する前は、インクスというコンサルティングファームで3D CADを使った製品機能の仕様検討や設計システムの開発の仕事に従事していました。今のTeachme Bizのビジネスにつながっていることは、何らかのシステムを作って納品する際、最後に必ず手順書の作成とトレーニングを求められることです。手順書は大抵Officeアプリケーションを使って書き起こすのですが、印刷、製本するまでにも時間がかかりますし、リーダーとして検品するのも大変でした。大規模プロジェクトの場合、最後の方になるとプロジェクトメンバーが30人ぐらいになるのですが、それぞれが思い思いに作るので、品質にもばらつきが生じます。コンサルタントにとっては面白くない仕事で、長年やってきて何とかできないかと思うようになりました。ちなみに私を含むスタディスト創業メンバー6人全員がインクス出身で、手順書作成業務を経験しています。

――全員がコンサルタント時代のペインポイントを共有していたわけですね。

 それが今のDXのトレンドで活かせていると思います。システムは作ったら終わりではない。使いこなして初めて生きてくる。多くの企業はその手前で苦しんでいます。1年のプロジェクトで手順書は10数冊を超えることも珍しくありません。改訂も大変です。
Teachme Bizの開発にあたっては、「手順や方法をまとめ、簡単に配信できるプラットフォームを創る」という構想を描きました。作るものは明確に決まっていたものの、問題はソフトウェアエンジニアがいなかったことです。さてどうしよう。社外に頼もうかとなった時、業務課題を熟知しているのは自分たちだからと、自社開発を選択しました。私自身はVisual Basic程度の経験はありましたが、スクールに通うことは一切考えず、技術本を買い込んで、書かれている内容をひたすら真似て、コードを書いては実践を繰り返しているうちに、2012年12月に完成したのがTeachme Bizの前身に当たるTeachmeでした。

――2010年に思い描いた通りのプロダクトができたのでしょうか。

 はい。初めに考えたのは、モバイルかWebで作ったコンテンツをクラウドにアップロードし、ログインしたユーザーが手順書を閲覧できるようにするというものでした。スタディストのミッション「伝えることを、もっと簡単に。」なのですが、手順をわかりやすくまとめて伝えることができれば達成できます。日中はコンサルティングで資金を捻出し、プロダクト開発は主に夜と週末に実施しました。実はコンサルティング依頼はたくさん来ていて、初年度から黒字化を達成していたのですが、何のために起業したのかを問い直し、案件を半分に減らすこともやりました。ベンチャーキャピタルからの投資を得たのは、プロダクトができて足場固めができてからです。「もう一度、同じことをやれ」と言われたら、さすがに勘弁してほしい気持ちです(笑)。

手順書共有から人材育成へ

――着手から3年目にできたTeachme Bizはどんな製品でしょうか。

 私たちはTeachme Bizを「Visual SOPマネジメントプラットフォーム」と呼んでいます。SOPとはStandard Operating Proceduresの略で、業務の質を均質化するために定めた「標準作業手順書」のことです。スタディストはタイに現地法人を構えていますが、ASEAN諸国でSOPと呼ばれることが多いため、「Visual SOP」を掲げて「見る手順書」を提供することに拘っています。

 通常の手順書の問題は、何と言っても文字ばかりであることです。作り手としては検討を重ねて必要なことを全て記載したつもりでも、読み手としてはなかなか読む気になれない。結局は使われない。そこでクラウドベースにして、必要な時に参照できるようにしたのがTeachme Bizです。静止画像中心のコンテンツを見ながら、やるべき手順を理解してもらう仕組みを提供しています。さらに静止画と動画のハイブリッド手順書を作ることもできます。動画だけのコンテンツにすると、一部だけ確認したいときにできない。更新する時も撮り直しになるなどの問題があります。これは私が前職で失敗して学んだことでもあります。

――なるほど。これも前職での経験があってこそできたと。

 画像と動画を組み合わせたスライドショー形式が基本フォーマットで、これを私は「スライドウガ」と呼んでいます。作成方法はスマートフォンのカメラで写真を撮り、クラウドにアップロードします。順番を調整して、矢印の追加やモザイク処理などの編集を加え、できたものを公開します(図1)。文字も使えますが、画像で伝わらない点を補うために最低限に控えるのが分かりやすい手順書を作るコツですね。

図1:手順書作成のプロセス 出典:スタディスト[クリックして拡大]

 2020年8月には新しく「トレーニング」機能もリリースしました。Teachme Bizで作成した業務マニュアルや手順書をトレーニングコンテンツとして、まとめて配信できるようにしたもので、「マイコース」をクリックすると、受講しなければならないコンテンツがまとめて表示されます。以前は必要に応じて検索してもらうだけでしたが、この機能でコンテンツを個別に配信できるようになりました。

――どこに何があるかがわからない新入社員にはうれしい機能ですね。

 コロナ禍で集合研修を行えずに困っている企業は多いと思います。例えば、入社オリエンテーションを実施したいのであれば、「Slackの登録」「SmartHRの使い方」「PCのセットアップ」などを組み合わせ、自分たちでコースを作ることができます。ツールの使い方に関するコンテンツは、ベンダーが提供しているものもありますが、自分たちで作った方が現場の業務運用を反映しやすいのです。eラーニングの定型的なコンテンツと異なり、業務手順を習熟してもらうことに特化したその会社独自の実践的なコンテンツで業務に慣れてもらうことができるようになると思います。また、セルフサービスで受講してもらうことで、関係部門の負荷を減らすこともできます。受講状況のモニタリングもできるので、非対面で研修を実施しないといけなくなったお客様には便利な機能です。

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著者プロフィール

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

     IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

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