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AWS vs IBM ハイブリッドクラウド戦略の違いを探る

edited by DB Online   2021/03/12 08:00

IBM Cloud Satelliteで顧客のハイブリッドクラウドの要求に応える

日本IBM 執行役員 テクノロジー事業本部 クラウド・プラットフォーム事業部長 今野智宏氏
日本IBM 執行役員 テクノロジー事業本部 クラウド・プラットフォーム事業部長 今野智宏氏

 AWSの大阪リージョンの開設で、国内主要クラウドベンダーの全てが東京、大阪の2拠点でサービスを展開するようになった。大阪リージョン開設の表明が最も遅かったIBM Cloudも、じつはAWSより早い2020年秋に大阪リージョンを開設している。IBM Cloudの大阪リージョンでは、既にSAP Certified InfrastructureおよびVMwareの認定構成も取得済みだ。IBM Cloudでは、リージョン間のネットワークを無償で利用できる。そのため東京、大阪間のActive-Activeを専用線の低レイテンシーのネットワークで結ぶ高可用性構成を安価に構築できることが優位性の1つとなる。

 現状、外部の変化に対応するために進めてきたデジタル化の第1章の時代から、自社データに自動化やAI、ブロックチェーンなどの最新技術を適用し、企業の内から外に向け変化を起こすデジタル変革の第2章が始まっている。企業にあるデータこそが重要な資産であり、クラウド化して企業の外にあるデータは全体の20%に過ぎない。80%は、まだ企業の中にある。そして内にあるデータを活用して自ら変革するタイミングでは「ハイブリッドクラウドが価値を持つことになります」と言うのは、日本IBM 執行役員 テクノロジー事業本部 クラウド・プラットフォーム事業部長の今野智宏氏だ。

 クラウド技術が登場してから10年ほどが経過しても、まだ20%程度のワークロードしかクラウドに移行していない。クラウド化は、まさにこれからだとも言う。このデジタル変革の第2章で重要性を増すハイブリッドクラウドの価値を高めるため、IBMは分社化を実施した。新会社は世界最大のマネージドインフラを提供する会社であり、IBM自身はハイブリッドクラウドとAIにフォーカスしたビジネスを展開する。両社は引き続き堅固なパートナーシップを結んでいくと今野氏。

 現状、さまざまなところの人、デバイスがつながるようになり、それぞれから生まれる膨大なデータを活用するためにAIが使われる。この新たなデータ活用の世界を実現するには、プラットフォーム・フリーでコンテナ化されたアプリケーションの稼働が重要となる。そのためこれからはIBM Cloudだけでなく他社のクラウド、そして既存のオンプレミス、エッジも含め、全体が一体化して機能するハイブリッドクラウドが価値を持つ。これがIBMの新しい時代のクラウドに対する認識となる。

 IBMの考えるハイブリッドクラウドの中で、IBM Cloudの強みはエンタープライズグレードで基幹システムを安心して動かせることが挙げられる。2点目の優位性はセキュリティで、業界最高水準のセキュリティ基準とコンプライアンスにも準拠している。3点目はオープンハイブリッドクラウド・サービスで、クラウドサービスをどこでも動かせることだ。これらの特長があることで、調査会社のITRによれば年商5000億円以上の大企業では、IBM Cloudのシェアが5年連続で1位となっていると今野氏は主張する。この大手企業に強いIBM Cloudの優位性をさらに伸ばすため、業界特化型のクラウドのソリューションを提供する。まずは金融業界向けに提供し、今後は順次通信、医療などさまざまな業界に展開する予定だ。

 さらに他社クラウドも含むハイブリッドクラウドの環境を支える新たなサービスとして、IBM Cloud Satelliteを提供する。現状ではコンテナベースのアプリケーションが人気だ。1つのクラウドやオンプレミスなど、閉じた環境であればコンテナの環境は比較的コントロールがしやすい。しかし多様なクラウドやオンプレミスを組み合わせた環境となると、コントロールが難しくなる。IBM Cloud Satelliteは、ハイブリッド、マルチクラウドの環境を一元的に管理できるサービスだ。IBM Cloud Satelliteにより「データとアプリケーションを、顧客の好きな環境で簡単に動かせるようにする。それが、ようやく実現しました」と、日本IBM テクノロジー事業本部IBM Cloud テクニカル・セールス部長 シニア・アーキテクトの安田智有氏は言う。

日本IBM テクノロジー事業本部IBM Cloud テクニカル・セールス部長 シニア・アーキテクト 安田智有氏
日本IBM テクノロジー事業本部IBM Cloud テクニカル・セールス部長 シニア・アーキテクト 安田智有氏

 IBM Cloud上のデータベースやWatsonなどのマネージドサービスは、これまではパブリッククラウド上にデータを持っていかなければ使えなかった。IBM Cloud Satelliteを使うことで、顧客が指定するデータセンターや他社のクラウドで、自分たちが作ったアプリケーションとWatsonなどのサービスを組み合わせて利用することが簡単に実現できる。「デプロイ先はオンプレミス、パブリッククラウドだけでなくエッジ環境もコントロールできます」と安田氏。前提はRed Hat OpenShiftのコンテナ環境であること。OpenShiftであれば、IBM Cloudのコントロールプレーンを中心に、さまざまな環境を一元的に利用し監視できる。適材適所でアプリケーションを動かすためには、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドを管理できるIBM Cloud Satelliteのようなサービスが極めて重要な存在になると言うわけだ。

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 同じハイブリッドクラウドに対応すると言っても、このようにAWSとIBMではその意味合いが大きく異なる。最終的なクラウド化に向かうための過渡期を上手く乗り越えるために、顧客が望むハイブリッドクラウドにも注力するのがAWSだ。一方、企業が取り組むべきこれからのデジタル化を支えるためにはマルチクラウドを含むハイブリッドクラウドこそが重要であり、それを容易に実現するためにOpenShiftに注力するのがIBMだ。企業はこれら性格の異なるハイブリッドクラウドのどちらが正解かを考えるのではなく、自分たちのクラウド化のロードマップを描く上で、どのパートナーと手を組むべきかをしっかりと考える必要があるだろう。



著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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