TBMはカルテのようなもの、ファクトベースで判断ができる
押久保:今、本誌ではTBMの連載を開始しています。TBMについてはいかがでしょうか?
加藤氏:日産自動車にいたとき、2005年くらいでしょうか。アプリケーションのポートフォリオを見ることができるソフトウェアを自分たちで作ったことがあります。その後、Apptioが2007年に誕生して使ってみようと思ったのですが、当時は非常に高額で自分たちの作ったソフトウェアを使い続けていました(笑)。
Apptioやその設計思想にもなっているTBMは、医療におけるカルテのようなものだと捉えています。これまでITは、ファクトベースで評価をしていく考え方が足りていなかった。データにしても、アプリケーションの利用率にしても、どのように評価できるのか? 評価ができないものは、そもそもビジネスで使うべきではない。日産自動車時代は、そのファクトベースの診断書は、私自身のメソドロジーで作っていたわけです。
TBMを見た時、100%一致はしないが、私自身のメソドロジーと似ていると感じて、これはいいと思いました。私自身のメソドロジーは私自身しか使えないようなものだった。それをTBMは体系化してある程度知見があれば、使えるようにしてある。これがあると、社長に診断書をいつでもすぐ出せるのです。「社長、コレステロール値が上がりました、下がりました」みたいにね(笑)。
成塚氏:売上報告などと同じように定量化されたデータを見せられる。
加藤氏:そうです。大切なのは戦略に沿ったKPIを立てて、そのKPIを継続的に見る。そして見せていくこと。そうすることで「良くなりました。なぜならこれをしたから」とか、「悪くなりました。なぜならこれを忘れていたから」とファクトベースでロジカルに説明ができる。
私はこの考え方で10年以上やってきています。逆にこうしたカルテのようなものがなければ、説明ができないはず。みんなどうやって説明しているのだろう。カルテがなくても「体調が悪いです」とはいえても、それが「風邪」なのか「インフルエンザ」なのかは診断項目を見ていかなくては判断できないと思うのですよね。
成塚氏:継続して見せていくことの重要性は非常に高いですね。あの、ライセンスが高いという件は、そこは調整していくようにしてまいります(笑)。
押久保:公開商談みたいですね(笑)。
加藤氏:SaaSの料金体系は、変わってほしいです。事業会社はROI(投資対効果)で考えるから、ソフトウェア会社もコンサル会社も出た価値に対して何パーセントお支払いという風にしてほしい。昔から成功報酬型にしてと言っているのですが、なかなか転換しないですね。まあ、困るんでしょうね(笑)。