日本の女性CIOは増えるべき そしてこれまでの働き方の常識を疑う
押久保:先ほどCIOという同じ役職でも日本とグローバルでは働き方、考え方が違うという話が出ました。加藤さんから見て、課題感がある部分はどこでしょうか。
加藤氏:CIOをとりまく日本の課題の一つが、女性CIOの少なさ。数人しかいません。私が知る限り、塩野義製薬の澤田拓子さん(現・取締役副社長)。彼女はIT専門家ではありませんが、CIOの役割も担っていました。もう一人は中外製薬に行かれた志済聡子さん。IBMから転身された方ですね。
私が勤務していたフランスやアメリカはイメージですけど、半分くらい女性なんですね。やっぱりダイバーシティっていうのはありますけど、男性だけがやるポジションではない。発想の転換ができるためにも日本にもっと増えないといけない。自分も意識していて、後継者には必ず女性が入るようにアドバイスしています。
あと、日本で顕著な課題といえば、階層の深さ。元請け、孫請け、ひ孫請け、玄孫請け……みたいなことが往々にしてある。私はあなたに発注したのに、作っているのはその3つくらい先にあったりする。行政も同じで、効率がとにかく悪い。そうならないためには、発注者側がしっかりスキルを身につけて、選別ができるようにならなくてはならない。適切な価格と納期を見極められるくらいのレベルまで高まれば、変化が起きていきます。
世界中にいい技術は転がっています。目の前の人の話だけでなく、自ら海外に目をむけて、積極的に取り入れる。これが早くできるかでだいぶ違う。コロナ禍でビジネス環境もだいぶ変わりましたよね。リモートも含めて、どうやって仕事を変えていくか。早く実現した人が勝つ。スピード感が重要で、これを私はベロシティ(Velocity)って言っています。会社の方向性、ビジネスを支えるために、早く結果を出すことを念頭に置いています。コロナ前には戻らないので、過去ではなく前へ。
押久保:三菱ケミカルではどのようなことをしていこうとお考えか教えてください。
加藤氏:サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルですね。DXの側面ではスマートファクトリーですね。プラントのスマートファクトリー、スマートプラント化を目指しています。キーとなるのはデータですね。構造データだけでなく、非構造も含めて、ちゃんとビッグデータとして管理し、データドリブンの会社として生まれ変わらせる。
情報システムの中だけでいうと、パワポ、エクセル、メールのない世界にしたい。前職でも同じことをいっていて、ゼロにはなりませんでしたがメールは半減しました。昔、紙だったものがマイクロソフトのOfficeでデジタルになった。これがインダストリー2.0だとして、ずっとそこで止まっている。ビジネスは変化しているのだから、3.0や4.0があってもいいはずで、まずはそういった部分も変えていきたい。
成塚氏:働き方が変わってきますね。TBMは、TBM Councilというコミュニティをもっていて、日本でもこれからITリーダーやCIOの方々のネットワークを作っていこうとしているのですが、そこへの期待などもご教示いただけますか?
加藤氏:TBM Councilは海外では、進んでいますね。CIOとかCFOにしてみると、お金はファクトベースで見せていかないと出てこない。だから「見せること」が当たり前になっている。日本は何にお金を使っているのかを「見せたくない」。本来、「見せること」は自分自身にとって武器となるのに、それができない。
これは政府も同じですよね。なぜこんなにお金があるのに有効に使われていないのか? と多くの人が感じていますが、それを分析する材料を「見せない」。「見えない」から、改善ができない。改善ができないから、成長できない。その点、人間ドックのようなカルテであるTBMを作り続けるTBM Councilを日本の経営者やCIO、CFOが知ることで変化してくれるのではないかと期待しています。