
コロナ禍により先が見通せない中でDX推進が叫ばれるなど、これまで以上にITの活用が求められています。そこで今回紹介するのは、『ITロードマップ 2021年版』(東洋経済新報社、野村総合研究所 IT基盤技術戦略室 NRIセキュアテクノロジーズ 著)です。既に注目を集めている技術の紹介はもちろん、5年後を見据えた最新の技術予測までが網羅されている一冊となっています。
進化を続けるテクノロジーを知る
昨年から続くコロナ禍の影響もあり、業界業種を問わずにDX実現に向けた動きが加速しています。先が見通せない中で、大きな指針となるのが進化を続けるテクノロジーをキャッチアップすることです。
現在利用されているものから将来的な活用が期待されるものまで、多岐にわたるテクノロジーをロードマップ形式でまとめているのが本書『ITロードマップ2021年版』です。野村総合研究所グループの研究成果を基にしており、昨年刊行された『ITロードマップ2020年版』の振り返りをはじめ、“ポスト・コロナ”時代のテクノロジーやセキュリティなど、ITの最新動向が網羅されています。
たとえば第2章では、5年後の重要技術として「リモートワークプレイス・テクノロジー」「感情認識AI」「スマートロボット」「シンセティック・メディア」「ボイステクノロジー」「Automated Data Science」という6つの領域をピックアップ。実際の活用事例と5年後の利用イメージ、普及するための課題などについて、図表を交えながら記載されているなど理解が深まる作りになっています。

また、「ジェロンテック」や「エンベデッド・ファイナンス」など、新たなサービスの台頭も予想されており、複合的なテクノロジーの活用についても把握することが可能です。ジェロンテック(老年学〈Gerontology〉+Technology)は、健康管理や認知症の増加など“超高齢化社会”に関わる社会課題を解決するためのテクノロジーであり、実際に認知機能アセスメントツールの研究や実用化に向けた動きが顕著にみられるといいます。
さらに、フィンテック企業の台頭による金融サービスの拡充の一方で、非金融サービスを生業とする事業会社が金融機能を自社サービスに組み込んで提供するエンベデッド・ファイナンスも、2025年以降には普及されると本書の中では予想されています。
もちろん、こちらの新サービス予想においても現状とロードマップ、課題がそれぞれ挙げられているため、事前知識がなくともすんなりと読み進めていくことができます。加えて重要語句に関しては、巻末に簡単な解説が掲載されているため、最前線で研究開発に携わっている人だけでなく、ITに関わる幅広い人にお薦めの内容となっています。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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