この10年パートナーに恵まれ大きな苦労なく成長できた
――これまでの日本におけるEDBの10年の歩みは、どのようなものだったのでしょうか。
藤田祐治氏(以下、藤田氏):2011年4月にエンタープライズDB株式会社が設立されました。実はアシストからは、2010年にディストリビュータ契約の話をもらっており、2011年9月にはいち早く契約を締結しています。 10年前、PostgreSQLはそれなりに浸透していましたが、EDBはほとんど認知されていませんでした。そういう時期にアシストがディストリビュータになってくれたのは大きかったです。データベースをよく知っているアシストが扱っているならと信頼してもらえたのです。
私は以前からアシストとは付き合いがあり、会長のビル・トッテンさんとも面識がありました。どんな会社かも知っていたので、自分が海外製品を扱うなら是非アシストと組んでみたいとの思いがありました。創業当初の我々は何もない会社で、アシストから洗練されたマーケティングや販売戦略などをたくさん教わりました。本社CEOのエド・ボヤジャンもアシストを高く評価しており、本社で行うアシストとのビジネスミーティングにも毎回参加し様々な意見交換をしています。
幸い、この10年大きな苦労はありませんでした。これは優秀な人たちに支えてもらった結果です。いいパートナーに恵まれ、大きな支援をもらいました。現在はアシストの他にサイオステクノロジー、富士通、日立製作所、NECソリューションイノベータ、HPE、日本IBM、SRA OSSがディストリビュータパートナーとなっており、国内でビジネスを一緒に進めています。
ところでEDBの最近の大きな動きとして、2020年9月に2ndQuadrant社を買収しました。これによりPostgreSQLのソリューションを提供する世界で1位と2位の会社が1つになり、PostgreSQLの39名いるメジャーコントリビューターのうち12名がEDBのメンバーになりました。この12名のうち2名は、日本法人の所属でもあります。EDBはPostgreSQLのコミュニティの中では、かなり影響力のある存在になっています。
コスト意識の変化とパブリッククラウドの浸透が普及を後押し
――アシストでは、10年前になぜ「EDB Postgres」を扱おうと考えたのでしょうか。
小西雅宏氏(小西氏):当時アシストは、ちょうどOSSのビジネスに大きく舵を切り、多くのOSS製品を扱いPostgreSQLもその1つでした。とはいえ2010年頃は、OSSのビジネス化には少し早すぎ、まだサブスクリプションも浸透していませんでした。OSSは安いイメージしかなく、ビジネスは苦戦していたのです。
変わったのは2011年の東日本大震災でした。エネルギー産業などが、設備投資のあり方を大きく見直した結果、OSSのPostgreSQLにも注目が集まったのです。このときは、商用データベースからOSSへの移行アセスメントをアシストでも数多く手がけました。
しかしアセスメントを実施しても、それでPostgreSQLが基幹システムに採用されるわけではありません。OSSには安かろう悪かろうのイメージがあり、実際、技術面の確認を顧客自身で実施すればそれなりの手間とコストがかかりました。コスト削減を目的に商用データベースから移行しようとしたのに、むしろコストが上がることがありました。
さらに基幹系システムにおいて高い信頼性のもとで使うとなると、しっかりとしたサポートも求められます。そういったニーズがあるときに、EDB PostgresならOracle Databaseとの互換性があり、EDBからサポートも受けられる。これはOSSの良さをもちつつ、商用に近い信頼性も得ることになります。つまりOSSと商用で離れていた距離を縮める役割をEDBが担ったのです。
商用かOSSかの選択が2014年頃から始まり、顧客がPostgreSQLを検討しているならばEDBを提案するようになります。アシストにとってEDBがOSSの中の1つのアイテムから、顧客ニーズに応じた提案をする際の重要な要素となったのです。
その後は導入も進み、事例も増えます。たとえば金融機関などで、基幹系システムでなくともミッションクリティカルなシステムでEDB Postgresの採用が進みました。そういった事例を、当社のイベントであるアシストフォーラムなどで顧客自身が紹介してくれ、アシストの顧客からもEDBなら高い性能がありミッションクリティカルでも使えるのではとの声が上がるようになります。
実際にEDBは急激に成長しており、ここまでとは予測していませんでした。顧客のコスト意識が変わったことに加え、パブリッククラウドの浸透も大きく影響しているでしょう。プラットフォームにはなるべくコストと手間をかけずにスピードを重視したい、そのニーズに必要十分な機能と性能がEDB Postgresにはあります。
――アシストが「Best Performance Partner - Japan」「 Best Performance Partner - APJ」というアワードを獲得しています。どのようなところを評価した結果なのでしょうか。
藤田氏:我々自身アシストから教わることがたくさんあり、その中から新しい取り組みも生まれています。たとえば、可用性を高めるレプリケーション機能を活用する構成の提案などを積極的に展開しました。アシストがEDBのビジネスを牽引していることは間違いなく、アワードを出すのが遅すぎたくらいです。
小西氏:アシストでは60以上の製品を扱っていますが、日本だけでなくAPJでもアワードをもらうのはなかなか難しいものがあります。その面からも、今回のアワードは大きな成果です。アシストには200人を超える営業がいますが、全員がEDBを常に意識しているわけではありません。しかし、今回のアワードをもらったことは社内にもインパクトがあり認識も変わりました。さらにアシストの6,000社を超える顧客にもEDBを知らないところはあり、受賞をきっかけに興味をもってくれるでしょう。
大手企業のミッションクリティカルな基幹システムもターゲットに
――改めて技術面から見て「EDB Postgres」は、どのようなデータベースなのでしょうか。
佐瀬力氏:EDB Postgresは、普通のデータベースが欲しい企業のニーズにマッチする製品です。さらに技術者としてEDB Postgresを提案する上で安心できる点は、ベンダーであるEDBとかなり近い関係性の中でサポートできることです。営業も技術もEDBと一緒に提案しサポートする、それが極めてやりやすいのです。
その上でOSSベースのEDB Postgresは、顧客が最適なプラットフォームをまだ1つに決めていない場合にもお薦めです。どのような環境でも動くので、マルチクラウド、マルチSI体制の選択肢としても最適です。これからのマルチクラウド時代に、極めて相性の良いデータベースでしょう。
企業のニーズにマッチした、ミッションクリティカルなシステムでも利用可能なデータベースであるという証明は十分できたので、今後はEDB Postgresでしか実現できないようなシステムにチャレンジしていきたいですね。
――今後のビジネス展開の方針をどのように考えていますか。
藤田氏:今後は、大規模なシステムをターゲットにしていきます。これまでも大企業で採用されていますが、どちらかと言えばあまりミッションクリティカルでない小さな規模から採用され、徐々に大きなシステムでも使われるようになりました。これからは、大手企業のミッションクリティカルなシステムを最初から狙います。そのために営業担当もアサインし、パートナーと協業し取り組む体制を整えています。既に一部では、その成果も出始めています。
一方で、これまで提供していなかったコミュニティ版のサポートも始めました。パートナーにはこの領域のビジネスを行っているところもありますが、それを奪うのではなく一緒に市場を拡げられればと考えています。
また今後は、コミュニティへもさらに貢献します。日本法人には、PostgreSQLのコントリビューターの鈴木幸市、メジャーコントリビューターのAmit Langoteと澤田雅彦がおり、7月26日から開催される「EDB Postgres Vision Tokyo 2021」でも講演します。鈴木はデッドロックをどうやって発見しそれを解消するのか、Amitはテーブル・パーティショニングを開発した1人でもあり、テーブル・パーティショニング機能が最新のPostgreSQL 14でどう実装され、Oracle Databaseとの比較や今後の開発方針なども説明します。澤田にはPostgreSQL 14の見所や今後の開発方針について解説してもらいます。このようにPostgreSQLを開発している本人たちから直接話を聞ける機会をもち、PostgreSQLの情報発信に力を入れます。
――アシストにおけるEDBの戦略はいかがでしょうか。
小西氏:アシストでは多くの製品を扱っていますが、アシスト以外からも同じものを買うことができます。そういった中でアシストを選んでもらうには、サービスやサポートでいかに顧客ビジネスの成功に貢献するか。EDB Postgresも、顧客の成功の視点で提案します。顧客にとって今後のデータベースのプラットフォームはどうあるべきかを考える。デジタル化から企業のDXにつなげるところで、EDBが活用できると考えています。その結果として、EDBのビジネスをこれまでの2倍はやりたいと思っています。
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