ベンダーの本気度を引き出す選定プロセス
選定の「正しさ」を具体的に把握できたところで、実際の選定プロセスを確認していこう。
まずは、こちらからツールベンダーに対して「そちらのツールの導入を検討したいのですが」と打診するところから始める。その領域の主要なツールは、レビューサイトを参考にすれば、すぐにリストアップできる。できれば、FMを作る前のタイミングで、こうしたベンダーに声をかけ、FM作りのインプットになりそうな情報を収集しつつ、どういった用途に長けたツールか、最近のトレンドへの対応状況、価格感などを見ておくとよいだろう。
おおよそ選定候補のツールが出揃ったら、その提供ベンダーへ提案依頼書(Request for Proposal、RFP)を投げる。よく、導入希望時期や選定方式など簡素な情報だけを記載したA4一枚のRFPを見かけるが、これだと、前述のようなキラキラデモと各社各様の見積書しか得られず、横並びで比較できないまま「では最もお安いところで」で終わってしまう。ツールを正しく選定するためのRFPには、最小限でも以下の情報が盛り込まれなければならない。
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マーケ組織のあるべき姿、コンセプト
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コンセプトを実現するために必要な将来業務と、乗り越えるべき課題
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将来業務をもとにしたシステム機能要求
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提案やデモプレゼンの方法
- 見積フォーマット
見てお気づきの通り、これまでの連載で述べてきた「企画と態勢」のアウトプットこそが、RFPに盛り込まれるべき情報となる。つまり、RFPはこれまで関係者がガチで議論して決めてきたことの集大成といえる。こうした「ガチ」のRFPを、実際に中身を考えたユーザー部門がベンダーに丁寧に説明することで、以下のような効果を得ることができる。これまで述べてきたものもあるが、改めてまとめてみよう。
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「我々は変わるんだ」という熱量と具体的な絵姿を見せることで、「定型の提案じゃ太刀打ちできない」というベンダーの本気度を引き出すことができる。
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「ベンダーに機能要求を精緻に伝えられる。ベンダーは、ツールに搭載された機能とのFit&Gapを正確に回答できる。ベンダーによっては「そのものズバリの機能はありませんが、こうすればそれに近いことができます」「もっとこうしたほうがいいのでは」といったクールな提案を受けることができる。
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ベンダーがやりたいデモではなく、将来業務に基づいたデモを見ることができる。
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RFPの内容に関係のない提案をもらっても、それが将来の組織や業務に不要なものであれば、冷静に拒否できる。
- 結果的に、各ツールを横並びで比較することができる。
ベンダーによっては、提案依頼やデモプレゼンに応じないところもある。そういう場合はたいてい数日~数週間の無料トライアル利用ができるようになっている。きちんとしたRFPがあれば、その内容に沿ってツールの良し悪しをチェックすることができるし、他のツールと横並びで比較することもできる。担当者がなんとなくツールを触るだけでトライアル期間が終わってしまっては、正しい選定ができなくなるので注意が必要だ。