DX推進に欠かせない「経営トップのメッセージ」と「データ仮想化」と「アジャイル思考」とは?
ゲスト:株式会社ジール 石家 丈朗氏、株式会社データ総研 藤生 尊史氏
「アジャイル」と「データガバナンス」は両利きで進める
──トップが正しく認識することがまず大事。その上でどのような体制でDXを推進するべきだと思われますか。
藤生:DX推進でよくあるのは、「情報システム部門が主導するパターン」です。DXではデータ活用が鍵になるので、デジタルデータプラットフォームを新たに導入する際には、情報システム部門が主導していくのは当然です。ですが、データを使って解く課題は、事業部門の現場の方々の課題です。現場を置き去りで進めた結果、使えないデータ、使えないシステムになってしまう企業は意外にも多いのです。
また一方で、各事業部門が小さなデータベースを作り始め、いざ全社的にデータを統合しようとしても、統一して使えない、もしくはかなりの工数、時間が掛かるものになるということも、よくある話です。
──大企業で新しいこと始めるのに、小さく始めるのは常套手段ですが、この場合はどうして良くないのでしょうか。
藤生:たしかにそうですが、小さく始めるだけだと、さきほどのような問題が起きます。もう一方で意識しなければいけないのが、データに関するルールやデータマネジメントの方法を考える「データガバナンス」を整備することです。

──ただ、完璧な計画を作ってからDXを推進するのでは何年経っても始まりません。
石家:おっしゃる通りです。多くの企業はそこで慎重になって必要以上に時間を掛けようとします。多額の予算も必要ですし、なかなか第一歩を踏み出せない企業がほとんどです。
──一方で、大企業がアジャイル的な発想でDXに取り組む際に、特に経営層から「もっと、しっかりとした計画が作れないのか」とアドバイスされると聞きます。
石家:現在の企業を取り巻く環境を考えると、ビジネスが非常に複雑になっており、最初からゴールが明確になっているケースは稀です。情報システム、データベースも同様で、レポートひとつ作るにしても、アウトプットから明確に逆算してシステム開発できる企業は多くありません。
大まかなゴールを定めつつ、DXプロジェクトや事業を進めながら、軌道修正していく。DXにおけるシステム開発も、このようにスタートする企業がほとんどです。
──DXをアジャイルに進めていく際に、データプラットフォームにも、今までとは別の要素が求められそうですね。
石家:従来のように、物理的にデータを統合してデータウェアハウスを作るというアプローチが本当に正しいのか。いわゆるウォーターフォールでのアプローチで、最終的な完成に漕ぎ着けられるのか。「いや、むしろトライ&エラーを繰り返してブラッシュアップするやり方の方が合っていませんか?」と疑問を投げかけると、「いや、そうだよね」と経営トップも現場の担当者も合意が得られるはずです。
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栗原 茂(クリハラ シゲル)
株式会社翔泳社 ビズジン編集部 編集長
株式会社翔泳社にて、出版流通の営業を13年、直販部門の立ち上げにて、大学・企業向けの書籍制作・販売、ソフトウェア販売の営業を3年、ビジネス書マーケティングを1年経て、Biz/Zineの前身であるBizGene(ビズジェネ)を立ち上げる。2014年11月にBiz/Zineを立ち上げて、コンテンツ・プロデューサーに就任。ビジネスメディアの編集企画を起点に、オープン研修講座であるビズジェネ・ワークショップ、セミナーシリーズであるビジネスブック・アカデミーや、Biz/Zine Dayの責任者。イノベーション領域でのメディア企画、研修・イベント企画に一貫して取り組む。2017年4月よりBiz/Zine編集長。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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鈴木 陸夫(スズキ アツオ)
フリーライター。川のほとりで家族と一緒にのんびりしながら、1日4時間労働で心地よい暮らしを探求中。趣味は人の悩みを聞くこと、「当たり前」を解体・再構築すること。お仕事のご依頼はフェイスブックメッセージなどでお気軽に。
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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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