ローソンがSAS Forumで語った「データ統合による顧客体験向上」の方法
SAS Forum 2021レポート#01:ローソン データ統合基盤構築の事例紹介
パーソナライズしたコミュニケーションで顧客体験の質を高め、ビジネス成長につなげたい。この思いの実現には、刻々と変化する顧客1人ひとりに関する多種多様なデータを活用しなくてはならない。しかし、現実にはデータ基盤が老朽化し、データ分析のポテンシャルを活かせることが困難な状況に置かれていないだろうか。コンビニ大手のローソンは、将来のデータ分析ニーズの高度化を見据え、データマネジメント基盤の再構築に乗り出した。10月21日から22日にかけて行われた「SAS Forum 2021」では、データ活用関連のシステムを担当する渡邉裕樹氏が登壇し、「ローソン データ統合基盤構築の事例紹介」と題した講演で、これまでのプロジェクトから得た成果を語った。
大きく3種類のデータを分析しているローソン

コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンを展開するローソン。国内では14,000店舗以上を運営しており、社員数も連結で10,000人を超える。2019年には企業スローガンを刷新し、グループの経営理念を「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします」、ビジョンを「目指すは、マチの“ほっと”ステーション。」と定めた。同時にその実現に向けた行動指針として「ローソンWAY」も5つ設定している。中でも3つ目の「チャレンジを、楽しもう」の精神は、「今回のプロジェクトにも通じるところがある」と渡邉氏は語る。
中長期では「すべてのお客様レコメンドNo.1」を目指しているところだ。「やっぱりローソンがいいよね」と言ってもらえる店舗を作るには、「圧倒的な美味しさ」「人への優しさ」「地球(マチ)への優しさ」の3つの約束で、社会課題に応えていくことを公に宣言している。今回、渡邉氏が担当したデータ基盤構築プロジェクトについても、「すべてのお客様レコメンドNo.1」の実現することが大前提としてあった。
ローソンが持つデータ資産は大きく3つに分類できる。1つは顧客に関するデータで、Pontaカード、dカード、ローソンIDに紐付けられているものだ。次に店舗のデータ。これには、店舗IDに加えて、所在地やオフィス街か住宅地かなどの立地条件のデータが加わる。最後が商品データである。プライベートブランドかナショナルブランドかの分類、商品特性などがある。この3種類のデータを組み合わせて分析した結果を本部、スーパーバイザー、工場、店舗にフィードバックする。本部はマーケティング施策や店舗開発に、スーパーバイザーは店舗経営の指導に、店舗は季節性やエリア特性を加味した棚割りの参考に、工場は店舗への納品にといった具合だ。すべてのデータをパーソナライズした顧客体験の提供に役立ててもらう。これが以降でローソンの進めるプロジェクトの目的である(図1)。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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