
コロナ禍を背景にSaaS市場が盛り上がっている中で、営業支援の分野も盛況をみせている。SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)といった製品においても新サービスが提供されている中、「顧客エンゲージメント」に注力しているのがMagic Momentだ。今回は、同社で製品開発責任者として活躍する清家良太氏にインタビュー。エンジニアとして出発しながらも、営業やカスタマーサクセスなど多様なポジションを経験してきた同氏ならではのプロダクト開発にかける思いを訊いた。
エンジニアから営業、CSにも挑戦 価値提供のための組織づくりへ
プロダクトライフサイクル(PLC)が短縮化し、市場に多くの製品・サービスが投入されている中で重要視されているのが「顧客エンゲージメント」だ。顧客との間に信頼関係を築くことで、いかに長く愛され続けるのかは重要な指標の一つとなっている。欧米を中心に顧客エンゲージメントを軸としたSaaSが展開される中で、2017年に設立したのがMagic Momentだ。

営業支援SaaSとして“セールスエンゲージメントプラットフォーム”を軸に「Magic Moment Playbook」「CS BPO」を展開し、「営業DX」が叫ばれる中で業績も堅調だという。そんな同社で製品開発チームをけん引しているのが清家良太氏だ。2022年からは、プロダクトマネージャーとデザイナーだけでなく、エンジニアとカスタマーサクセス(CS)を統合した“製品開発チーム”を新設し、製品開発責任者というポジションで辣腕を振るっている。
そんな清家氏のキャリアを振り返ってみると、灘高等学校から東京大学に進学後、東京大学の大学院情報理工学系研究科でユビキタスネットワークに関する研究に勤しむなど、研究畑の出身だ。「研究というのは10~20年という長いスパンで進んでいくのが一般的です。一方で、当時はFacebookやTwitterが市民権を急速に獲得していくなど、インターネットを通じて世界が変化していく中で“おいていかれる”という感覚を持ちました」と清家氏。そこから、研究ではなくビジネスの世界でソフトウェアエンジニアとしてスタートを切ることになり、インクス社を経てビービット社へ入社する。
Webの技術要件が進化していく中で、清家氏もWebエンジニアに軸足を移すと広告の効果測定ツールなどの開発に4年ほど従事。新たな技術をキャッチアップしていく傍らで、「多くの類似ツールがある中で、自社の提供するサービス価値がわからなくなりました。字面の要件だけではユーザーが抱えている課題などもわからなかったのです」と振り返る。そこで営業職を1年ほど経験すると、カスタマーサポート(CS)職にも挑戦。このときに営業職として契約をとることの難しさや楽しさはもちろん、サービス価値は“ユーザーが体感して納得するもの”だと認識できたという。また、課題提案時の相手とは異なる担当者が現場でサービスを利用していることも多く、ユーザーの中で課題認識にズレがあることも感じたと語る。

その後、プロジェクトマネージャーとして開発部門で従事し、ECに関するビジネスで起業。エンジニアとして必要なスキルをキャッチアップしながら、クリエイターズマッチ社に入社後は開発責任者を務めたという。その中でチームが成長していくとともに、ここでも“エンジニアと営業、カスタマーサポートの連携”というテーマに直面。清家氏は、「エンジニアが言われたもの作るだけではダメだと思っています。そこで、カスタマーサクセスチームの事業部長として営業もあわせてマネジメントしながら、解約率を下げることにチャレンジしました」と述べる。
その後、企業が上場に向かっていく中で、成約率向上のための機能開発が優先されるようになるなど、プロダクト開発のあり方を再度見直し、転職を決断。ビットキーに転職後はエンジニアとしてのスキルを身に着けていった。清家氏は、「経験を積んでいく中、改善するべき対象がプロダクトなのか組織なのか、その解決の糸口に悩んでいました。そのため、より“エンジニアリングとビジネスが密接に関わる”領域で新しいチャレンジをしたいという思いが強くなったのです」と振り返る。そこで、エンジニアと営業、CSによる良質な製品・サービスの生み出し方を追求しているという点に共感し、現職であるMagic Momentに参画したという。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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