経営陣の想いを象徴的に表現した組織、「不動産DX企画部」設立
不動産情報メディアや不動産業務ソリューションなど、サービス提供会社として長らく不動産業界の発展に貢献してきたアットホーム。顧客である不動産会社のDXに貢献するという立ち位置と、自社内のDXという2つの課題を持ち、様々な取り組みを進めてきた。
特に昨今、DXを推進する上で、社外の顧客企業に対するサービスとしての「お客さま支援のDX」、アットホーム内の業務をデジタル化しようという「社内業務DX」、そして、6万店という加盟店と営業担当者間のやりとりをデジタル化して効率化する「営業DX」という3本の柱を掲げてきた。とりわけ「営業DX」については、3日に一度加盟店に訪問するビジネスモデルの強みを活かすためのデータ集積などに課題が多く、改善に力を入れているという。
その中で、直井氏が部長を務める不動産DX企画部は2021年12月に立ち上がり、顧客である不動産会社に対して情報流通と業務支援に対してITソリューションを提供する役割を担う。現在は60名の部署となり、30商材ほどのサービスを担当するなど、やるべきことはまさに“めじろ押し”の状態だ。
「DXというキーワードはかなり前から社内でも飛び交っていましたが、不動産DX企画部と部署名が付いたことが一つのマイルストーンかもしれません。他社の場合、『経営戦略室』などに設置されることが多いと思うのですが、元々サービス企画の部署にDXと名付けたところに、経営陣はじめ当社の『お客さまである加盟店のDX課題解決に貢献したい』という気概が現れています」と直井氏は語る。
元々DXに至るまでのステップにおいて、アットホームが「デジタイゼーション(Digitization)」を業界に提案するタイミングは相当に早い時期だった。たとえば、「ATBB(at home Business Base)顧客管理」の前身となる、CRMソリューション「アットホームサーチ」を投入したのが2000年頃で、「紙と人の知識や経験、努力」と言われていた当時の不動産の顧客管理のあり方を大きく変えた。他の領域についてもいわゆるITソリューション、ITシステムを導入し、スマートフォンやアプリに対応するなど、世の中の変化と足並みを揃える形で進化を遂げてきた。
また、IT基盤についても随時強化されてきており、「やりたいこととセキュリティが相反すること」も多いため、できるだけ先回りして備えるようにしているという。たとえば、ここ5年ほどでプライベートクラウドからAWSなどへの移行を進め、現在はハイブリッドクラウド環境で運用。社内業務についても、セールスフォースやサイボウズなどのクラウドサービスを積極的に導入・活用を進めてきた。これにより、コロナ禍で在宅勤務が余儀なくされた際も、ほぼ業務的な問題が生じることなく移行することができたという。並行して、社外用環境についても整備しており、直井氏が「サービスプロセスの段階で一体となっている」と言うように、不動産DX企画部と情報システム部門との両輪で、新しい提供サービスを開発する体制を構築している。
「デジタライゼーション(Digitalization)がほぼ整いつつある中で、ようやくDXという言葉を使えるようになってきたと考えています。次はどのようにして経営改革につなげるか、たとえば配置転換や新たな組織づくりなどまで見えてきました。『一定のデジタル基盤は整った、はたして次はどのようにトランスフォーメーションするのか』。そこが次の課題だと考えています」(直井氏)