
2022年6月のOECD経済見通しによれば、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、世界経済は低成長と物価高騰の方向に進んでいる。外国為替市場に目を向けると、2022年7月末は対前年同期比で20%の円安が進行している。食料、エネルギー価格の上昇で、サプライチェーンの混乱が継続することが確実であり、世界中の企業が事業計画の見直しを迫られている。このような情勢を受け、Anaplan Japanは、2022年7月22日、「インフレ環境における企業の計画業務・経営管理DXに関するメディアラウンドテーブル」を開催した。
企業経営者にとって頭の痛いインフレ問題
Anaplanは米サンフランシスコに本社を置くSaaSの会社で、日本法人設立は2016年になる。国内では大企業を中心に約200社が各社の計画業務で利用中である。2022年に稼働開始となった企業の中にはセブン&アイホールディングス、電源開発、三菱地所などが挙げられる。
現在、世界中で進行しているインフレは企業業績に影響を及ぼしている。例えば、国内のある素材メーカーでは燃料費の高騰が収益に及ぼす影響は数100億円レベルに達している。また、別の半導体メーカーでは部材の調達価格の上昇に苦しんでいる。意外なところでは、大手国内金融機関ですら、海外拠点の人件費上昇と円安が業績に影響を及ぼしている。私たちの日常生活でも身近な問題だ。物価の上昇で、購入を見送ろう。バーゲンまで待とう。安価なブランドに切り替えようなどの行動変容がさまざまな場面で起きている。
マクロ経済環境は変えられないが、企業としては需要と供給のバランスを見極めたいところである。顧客需要が旺盛でも生産キャパシティを上げられない。原材料価格が上昇すれば粗利は減る。では販売価格を上げるか。だからと言って、上げすぎれば顧客が離れてしまう。代理店経由で販売する商品の場合は、マージンを加味した総合判断が必要になる。しかし、諸条件を変えてシミュレーションを行い、計画を見直し、承認を得るには時間がかかる。やり切ったと思っても、毎日のように円安が続けば追随することも難しい。中田氏によれば、Anaplanは一連の計画業務に関する手間を減らすためのツールなのだと言う。
計画を楽に速く作れることはAnaplanが提供する価値の1つであるが、同様の機能を提供する企業は他にも存在する。Anaplan独自の優位性として中田氏が指摘するのが「コネクテッドプランニング」である。通常、大企業は複数の事業を展開していて、その事業拠点も世界各国に散らばる。組織が大きくなるほど、ある部門でやった仕事が次の部門に引き渡されてできる繋がりの範囲は大きくなる。ならば計画も繋がるべきだとして、Anaplanはファイナンス、販売、人事、生産など、様々な計画をワンプラットフォームでできる製品を提供してきた。

Anaplan Japan株式会社 ソリューションコンサルティング ディレクター 大場達生氏
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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