データ分析専門組織を立ち上げるまで
あいおいニッセイ同和損害保険は、世界第8位の保険グループであるMS&ADホールディングスの傘下にある保険会社である。最近の主力商品はテレマティクス自動車保険。これはスマートフォンやドライブレコーダーのような端末からドライバーの走行データを収集し、実績に応じた保険料を算定するものである。その分析に加えて、ドライバーに安全運転を促す情報提供も行なっており、2022年6月時点の契約台数は150万台に達した。
これまでの保険会社のビジネスは、その公共性に鑑み、保険業法の定める範囲に限定されてきた。それが2020年5月の法改正で金融サービス仲介業が可能になるなど、規制緩和の方向にある。保険商品の販売だけでなく新しいビジネスを手掛けることが可能になったが、高度なサービスを提供するにはデータを使いこなせなくてはならない。それができる体制を整備しようと2018年6月に発足したのがデータソリューション室である。新組織としては、2017年3月に中途入社した大沼氏1人からの船出となった。
現在同氏がリーダーを務める同室のミッションは「新しいビジネスモデルの創出」「保険商品開発や業務の高度化」「データを活用する人材の育成」の3つである。組織の立ち上げ以来、人事と連携してデータ人材の育成に取り組み、新卒採用や中途採用を積極的に進めた結果、2022年6月時点で23人の組織に成長した。この専門組織の体制強化に加え、「社員のデータリテラシー向上」「見習いデータサイエンティストへの教育」「経験のあるデータサイエンティストのスキルアップ」の3つの育成プログラムをパートナーの滋賀大学と連携しながら進めてもいる。
人材育成を強化しながら、並行して分析プロジェクトの立ち上げも行った。2019年には、社内の各部署からビジネス課題を上げてもらい、それぞれの課題に対してビジネスインパクトと分析による解決の実現性を精査する活動に取り組んだ。中でもポテンシャルがあると判断できたものについては、プロジェクトを立ち上げて分析活動を実施している。2020年には、英オックスフォード大学からスピンオフしたAIスタートアップMind Foundryとの資本業務提携も始めた。2021年はテレマティクス自動車保険のデータを分析するため、専用のデータ分析基盤の構築も行い、今後に向けてはMind FoundryのAutoMLの機能を活用するための基盤構築も計画している。