2021年11月、IBMのマネージド・インフラストラクチャー・サービス事業が分社化されKyndrylが誕生した。分社後直ちにAWSやMicrosoftなどのクラウドベンダー、Dell TechnologiesやPure Storageなどのハードウェアベンダー、さらに国内ではTISなどのSI企業とも提携している。新たな協業体制を積極的に進めるKyndrylは「世界最大のITインフラサービスプロバイダー」と自称する。そんなKyndrylは、2022年9月に新たなオープンなプラットフォーム「Kyndryl Bridge」を発表した。Kyndryl Bridgeについて、キンドリルジャパン 執行役員 最高技術責任者 兼 最高情報セキュリティ責任者 テクノロジー・イノベーション本部の澤橋松王氏に話を聞いた。
ITインフラの自動化+IT部門の運営自動化に挑むKyndryl

IBMのマネージド・インフラストラクチャー・サービスと言えば、メインフレームを含むIT環境をIBMが責任を持ち運用管理するアウトソーシングサービスのイメージだ。この領域を切り離すことで、IBMはハイブリッドクラウドとAIの活用に注力するビジネス体制を整えた。
一方切り離されたKyndrylは、IBMの縛りから解放されオープンにビジネスを進める。IBM時代には、顧客からクラウドの要求があった際にも、IBM Cloudを優先した提案をせざるを得なかった。特にアウトソーシングでサポートするとなれば、他社クラウドではなくまずはIBM Cloudを活用した提案となるのも仕方がなかっただろう。しかし当時から、IBM Cloud以外を扱って欲しいとの声は多数あった。Kyndrylになり、そういった顧客の声に柔軟に応えられる。実際に以前ならば競合だったAWSやMicrosoft、Oracleとパブリッククラウド領域で積極的に提携している。
マルチクラウドの対応が可能となったKyndrylが、新たに提供するのがKyndryl Bridgeだ。これは「Kyndrylが進めるデジタルプラットフォームの構想を、具現化するソリューションです」と澤橋氏。Kyndryl Bridgeは、既存のアウトソーシングサービスの顧客だけでなく、そうでない顧客を含めたIT業界全体のやり方を大きく変えるプラットフォームだと説明する。
具体的にKyndryl Bridgeが変えるのは、ITの運用だ。ここで言う運用とは、サーバーハードウェアなどの管理やその上で動かすアプリケーション運用だけを指すものではでない。日常的なIT部門における「運営」プロセス全体を指す。IT部門にはサーバー管理や障害対応はもちろん、ヘルプデスク業務、ハードウェアの調達、新たなクラウドを選択する際のサービス比較のようなさまざまな業務プロセスがある。
サーバーの運用監視などは、ツールを用いることでIT化が進んでいる。一方でハードウェアなどの調達やサービス比較などは、IT化が遅れているプロセスだ。IT部門が人手で行っている業務プロセスを含め、ソフトウェアやAI、機械学習などの新しいテクノロジーを用いて変革する。それを実現するのが、Kyndryl Bridgeだ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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