IDaaSやiPaaSと「SMP」は何が違うのか
「2022年は、SaaS管理が注目されるようになった印象があった。その直前にローンチした『マネーフォワード Admina』も事業開始から1年が経ち、大きな手応えを感じている」とMFi代表の今井氏は自信を覗かせる。
2021年に公表されたガートナーの米国の技術トレンド予測『Hype Cycle for Cloud Security, 2021』によると、SMP(SaaS Management Platform)は“「過度な期待」のピーク期”に位置づけられていた。まさに認知度が向上して市場が盛り上がり、定着に向けて動きだしている状況にある。日本は米国市場のトレンドから3年から5年ほど遅れると予測され、いわば「立ち上がり=元年」の時期にあるというわけだ。
当然ながら、SMPはSaaSの導入・活用状況と深く関係している。ある調査によると日本のSaaS導入数は1社あたり平均7程度[1]であるのに対し、米国は平均89にも上る[2]。その数から想像するにカオスな状態にあると思われるが、今井氏は「ゆくゆくは日本でも到来する未来であることは明白」だと指摘。事実、マネーフォワードでも約300のSaaSを利用し、MFiの顧客でも500以上のSaaSを活用する企業があるなど、SaaSを活用する企業は続々と増えているという。
“増えすぎる”SaaSに対して、複数サービスのIDやパスワードをクラウド上で一元的に管理する「IDaaS(Identity as a Service)」や、複数のクラウドに分散する業務システムを統合する「iPaaS(Integration Platform as a Service)」など様々な解決策が示されてきた。ここで気になるのが、SMPやIDaaSとの違いだ。SMPである『マネーフォワード Admina』について、特にIDaaSにおけるシングルサインオン機能との違いについて質問を受けることが多いと今井氏。「カバーするSaaSの数が、IDaaSでは社内のSaaSのうち2~3割程度に留まる(SAML連携の場合)のに対して、『マネーフォワード Admina』のようなSMPはほぼ全域をカバーし、IDのみならずコストやシャドーIT検出などセキュリティ面もカバーしている」と答える。
また、対象となる企業についても1,000名以上を擁するエンタープライズ企業からのニーズだけでなく、中小規模でも無料版から使いはじめ、徐々に課金サービスに移行する企業も増えており、規模や業種業態を問わず「SaaSを多く使う企業」なら対象になるという。さらに競合として見られることの多い、IDaaSやiPaaSをあわせて使っている会社も少なくない。実際、マネーフォワードiの既存顧客のうち半分程度はIDaaSを利用している企業だという。IDaaSではシングルサインオンやMFA(他要素認証)といったセキュリティ機能を提供しているが、SMPではSaaSの契約やアカウント管理などがメインの提供価値となる。つまり、「似ている部分もあるが、捉えている範囲が異なる」わけだ。
「利用しているSaaSをExcelやスプレットシートなどに記載して管理しているならまだ良い方で、特に事業部で利用しているSaaSなど利用状況を誰も把握していないことも少なくない。その管理をSMPで自動化することで煩雑な作業や記載ミスなどをなくし、『どの部署がどのようなツールを使っていて、誰がどんなアカウントをもっているか』などを可視化して一元管理できる」と今井氏は評した。
[1] 「企業のSaaS利用に関する調査結果」(2019年12月、HENNGE)
[2] 「Okta、業務アプリの利用動向に関する年次調査「Businesses at Work 2023」 の結果を発表」(2023年2月、Okta)