オラクルの分散クラウド戦略とは
2023年4月14日、Oracle CloudWorld Tour Tokyoが開催された。今回のイベントは、昨年米国ラスベガスで開催されたOracle CloudWorldを世界展開したものであり、5都市で開催されたものの1つだ。日本でリアルな大規模イベントは3年振りの開催だ。かつてOracle OpenWorldと名前で開催されていたときは、製品やサービスを前面に押し出しそれらの最新アップデートを伝える場だった。CloudWorldになってからは、顧客の事例にフォーカスしており顧客の成功体験がキーワードとなっている。今回のイベントも基調講演にはOracle Cloudを利用しているトヨタ自動車、イトーキが登壇しており、他のセッションにもユーザー企業が登壇し自らOracle Cloudをどう活用し変革に取り組んでいるかが伝えられた。
Oracleは、他のパブリッククラウドベンダーにはない「分散クラウド」のソリューションを打ち出している。OracleにはまずIaaS、PaaSのサービスとなるOracle Cloud Infrastructure(OCI)がある。さらにOCIの上で動いている、Oracle ERP CloudやOracle NetSuiteなどの包括的なSaaSもある。
そして他のクラウドベンダーにはない取り組みとなっているのが、Oracle Cloud Infrastructureの仕組みをそのまま顧客のデータセンターで動かすOCI Dedicated Regionだ。またエッジのソリューションとしては、フルマネージドのハードウェアとソフトウェアを顧客のデータセンターで利用できるようにするOracle Exadata Cloud@Customerも用意されている。
もう1つ力を入れているのが、他のパブリッククラウドとのシームレスな連携だ。Oracle Interconnect for Microsoft Azureは、Oracle CloudとMicrosoft Azureのデータセンターを低レイテンシーで直接接続するものだ。単に別々のクラウドサービスを接続して利用できるようにしたのではなく、異なるクラウドサービス間で互いのサービスを融合して利用できるように1歩踏み込んだ協業関係を築いている。このような取り組みは、顧客の要望に応じたもので、今後AWSなど他のクラウドサービスとの間でも実現していくことが昨年のCloudWorldの場でも明らかにされた。
そしてもう1つの分散クラウドのソリューションが、Oracle Alloyだ。これはOCIのクラウドプラットフォームをパートナー企業がコントロールして利用できるようにするものだ。Oracle Alloyを使えば、パートナーはOCIを自社ブランドのサービスとして顧客に提供でき、パートナーがサービスプロバイダーとなってOCIベースのクラウドサービスを提供できるようになる。Oracle Alloyの中身の部分はOCI Dedicated Regionと基本的に同様であり、それにパートナーがコントロールするための機能が加わることになる。
分散クラウドは、Oracleにしか提供できないものであり、Oracleでは顧客に最適な選択肢を提供するためにこれを提供すると言うのは、日本オラクル 常務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏だ。そしてOracleの分散クラウドのサービスは、単一の次世代アーキテクチャで実現されていることで、全てのモデルで高いサービスレベルを提供し、コストパフォーマンスが高く、短期間で柔軟なサービスの拡張できると主張する。
Oracleより先行する他のパブリッククラウドサービスは、豊富な機能、サービスの提供で自社サービスに顧客を囲い込む形となっている。それに対しクラウド市場で出遅れたOracleは、他のクラウドベンダーとも積極的に連携し、パートナーとも深く協業する分散クラウド戦略をとっている。これは出遅れたことで、顧客が先行するクラウドサービスを既に使っているという事情もあるだろう。
とはいえ、現状では複数のクラウドを利用するマルチクラウドも当たり前であり、さらにソブリンクラウドのようにデータだけでなくクラウドのコントロール、ガバナンス管理を顧客側で持ちたいとの考えもある。これら顧客の多様な要望には、Oracleの分散クラウドソリューションのほうが容易に応えられるとも言えるだろう。