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グッドナイト博士に聞くSASの今後──生成AIとの共存、エンジニアの未来、IPOの理由

「SAS Innovate 2023」レポート


 SAS Instituteのジム・グッドナイト(Jim Goodnight)博士は、47年前にいち早くアナリティクスの重要性を見抜いてSASを創業、この市場を牽引してきた。SASが5月に米フロリダ州オーランドで開催した「SAS Innovate」で、Goodnight博士にアナリティクスの現在、ジェネレーティブAI、AI倫理、SASのこれからなどについて話を聞いた。

SASはジェネレーティブAIへの取り組みは積極的

SAS Institute ジム・グッドナイト(Jim Goodnight)博士
SAS Institute ジム・グッドナイト(Jim Goodnight)博士

──ジェネレーティブAIの印象と、SASの取り組みについて教えてください。

 SASが使うAIは、予測のための数学モデルを作り出すことを目的とした反復型ニューラルネットワークや機械学習モデルなどが中心で、これまでジェネレーティブAIは研究していませんでした。ChatGPTを試してみましたが、かなりいい印象を持ちました。ただ、知らないことについては話を作り上げますね。

 何十億ものパラメーターを持つコンピュータモデルの中に人間の知識を全て詰め込むと、どんなことになるのかと思うことがあります。ひょっとして、人類の次の進化なのかもしれません。

 SASとしては、SASを理解し、顧客の役に立つというところにジェネレーティブAIのチャンスがあるとみています。顧客がSASを使うにあたって、使い方をガイドしたり、疑問がある時に「どうすればいい?」と尋ねると質問に答える、というようなことが考えられます。

──将来、SASのインターフェイスがチャットのようになるということでしょうか?

 その可能性は大いにあります。

 だが、我々はジェネレーティブAIの取り組みを開始した段階であり、いつ頃実現するのかなどについてはこれからです。オープンソース分野ではジェネレーティブAIへの動きが活発ですし、企業でも取り組みが進んでいます。パラメーターという点では、MicrosoftのOpenAIバージョン(Azure OpenAI Service)より少ないようですが。

 この分野は立ち上がり始めた段階であり、これからだと思います。

──イベントでは、「責任あるイノベーション」を強調し、AI倫理への取り組みも示しました。

 モデルは過去のデータに基づいて作成されるため、データにバイアスがあればAIが出す結果にもバイアスが反映されます。AIだけでなく、データを使うすべてのモデルで同じことが言えます。データやモデルの作成自体でバイアスがないかを確認することが重要です。

SASのプログラミングも可能なChatGPT、エンジニアはどうなる?

──AIと雇用についてお聞きします。数年前には繰り返しの多い単純な仕事がなくなると予想されていました。ジェネレーティブAIにより、ナレッジワーカーも例外ではないと言われています。

 ChatGPTでSASのデータプログラミングをやらせたところ、それなりのレベルでした。もしジェネレーティブAIをプログラマーとして訓練することができれば、プログラマーはそれほど必要なくなるかもしれません。しかし、それがすぐに現実にならないことを祈っています。

 シリコンバレーでは技術者の大規模な一時解雇が続いていますが、これはこれらの企業が人を雇いすぎたからです。それまでシリコンバレーの企業は先に人材を獲得しておくために、他社が雇わないようにと、採用を進めました。ですが、ここ2〜3年で採用された人の中には「何もすることがない」という状態だった人も多かったようです。ただ座っているだけだったということです。

 このような異常な状況に気がついて解雇が始まったのですが、解雇された技術者はすぐに仕事が見つかるでしょう。米国には1,000万の技術者の求人があります。

 この国(米国)の最大の問題は、働く人を見つけることです。誰も働きたがらないので、レストランに入っても、誰かが(給仕に)来てくれればラッキーです。新型コロナの後に、さらにひどくなったと感じます。

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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