SaaSを通して企業は“ソフトウェア化”していく
“Software is Eating the World.”──ソフトウェアが世界を飲み込んでいる
2011年8月、世界有数のベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz:a16z)の共同創業者マーク・アンドリーセンはウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿した記事で、ソフトウェアが社会に広がっていく様子をそのように表現した[1]。それから約12年。ソフトウェアはSaaSという形態で提供されるようになったことで、より手軽に活用できるようになり、“世界を飲み込む”速度を上げている。もはや企業には、SaaSを使わない部署など存在しないようになってきた。SaaSは隅々にまで浸透し、小さなところから少しずつ業務をソフトウェアに置き換えている。また、「ChatGPT」のようなAI技術のブレイクスルーにより、SaaSは急速な進化を遂げており、今後も加速度的に業務はソフトウェアに置き換えられていくだろう。
企業が利益を上げるために業務を行う人々の集合体であるならば、業務がソフトウェアに置き換えられていくことは、“企業がソフトウェア化”していくということだ。本連載「あふれるSaaSで頭を抱える情シスへ」の第1回〜第5回では、SaaS導入にあたっての課題やシステム連携、データ活用の仕方など、SaaSを効果的に浸透させるための方法について述べてきた。連載の締めとなる本稿ではソフトウェア化していく企業において、情報システム部門がどのようなビジョンを持ち、行動していくと良いのか。SaaSを開発し、各企業に様々なSaaSの導入を進めてきた筆者としての考えを述べていきたい。
[1] Marc Andreessen「Why Software Is Eating The World」(The Wall Street Journal,Updated August 20, 2011)