DXの成功に欠かせない、現代の「強固な運用」とは
草間氏はセミナー冒頭で「DX、取り組まれていますか?」と切り出した。企業ごとに、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)とフェーズはそれぞれだが「取り組み始めている企業が増えてきていると実感しています」と草間氏は語る。
実際DXに取り組む中でクラウド化、さらにはマルチクラウド化が進み、組織の内製化比率を高めようとする企業も増えている。DXに向けて多くの組織が動き出しているものの、どこかで停滞している企業も少なくない。
苦戦している理由について、草間氏はいくつか理由を挙げた。まずは人員不足や予算不足だ。「DXを進めよ」と命令が下ったものの、人材や予算がつかず身動きがとれない、細かな要求への対応に時間が割かれてしまう、それ以前に「パソコンが壊れました」と本来のDXとは異なるサポート業務に追われてしまうなどの状況が考えられる。
また、モチベーション維持の難しさもある。DXへの取り組みの成果はすぐさま明確に表れるとは限らない。逆にDXが実現できなくても、すぐに悪影響が及ぶわけでもない。ゆえにどこかでモチベーションが続かなくなってしまうのだ。ただし「中長期的な視点では、取り残されることで確実に影響が出てきます」と草間氏はくぎを刺す。
理想と現実を見てみよう。革新的な技術を駆使することで、ビジネスをぐんぐん伸ばすようなDXの輝かしい側面に惹かれてしまいがちではある。だが実際の運用では「増え続けるシステム」や「変わり続ける技術」などの苦しい側面もある。
草間氏は「DXを進めていくにはキラキラしたところだけに目を向けるのではなく、それらを実現するための強固な運用が必要不可欠」と強調する。
かつて「強固な運用」といえば、安定したハードウェアやソフトウェアを揃え、静的なネットワークで構成するものだった。システムやソフトウェアは数年で更改するため、言い換えれば数年間は据え置きだ。しかしそれでは変化の早い時代にそぐわない。現代においては短いリードタイムで導入し、最新技術へのキャッチアップや突然の需要増加に対応することが求められる。だからこそ、オンプレからクラウドへの移行は必至だ。
クラウドだとオンデマンドで必要な分だけリソースを用意し、使った分だけ利用料を払うように費用の使い方が変わる。複数のサービスを組み合わせたり、ネットワークを動的に変化させることもある。ここで活用するのがAPIだ。APIは様々なサービスを組み合わせたり、構成変更を自動化したりするにも役立つ。
「クラウドの柔軟性や拡張性を生かし、APIを駆使し、動的に運用することが“現代流の『強固な運用』”です」と草間氏は言う。負荷分散や冗長構成で、部分的にシステムが落ちたとしても「全体としては落ちない」状態を実現できればいいのだ。
なお、クラウドの動的な環境では、これまでの課題(システムの増加、変化し続ける技術)が自動的に払拭されることはなく、むしろより直面することになる。草間氏は「楽をするためにクラウドを使おうと思ったのに、実際にはクラウドに“使われている”なんてことはないでしょうか」と問いかける。