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週刊DBオンライン 谷川耕一

加速するエンタープライズITの「生成AI」競争──主要ベンダーの思惑と動向を探る

 OpenAIに巨額の投資をおこなうMicrosoft、対抗する対話型AIサービスのBardをリリースしたGoogle、長年のAIの歴史を持つIBMなどエンタープライズITベンダーの競争は一見、激化しているように見受けられる。現状はお祭り騒ぎの様相を呈しているが、自社製品やサービスに生成AI(ジェネレーティブAI)の技術を取り込んでいるITベンダーは、意外に冷静に対処しているように見える。主要ITベンダーの生成AIの戦略が見えつつある現在、各社の動向と思惑を整理して見ていこう。

生成AIのスタートアップ企業の買収が加速する

 OpenAIと強い結びつきのあるMicrosoftや、AI技術の研究開発に取り組んできたGoogle、IBMなどは、独自の生成AI技術を提供し、それをサービスとして展開する動きを加速している。その上で既存製品やサービスに、積極的に生成AIの技術を組み込み、ユーザーインターフェイスの革新、コンテンツの自動生成などにいち早く取り組んでいる。

 NECや日立などの日本の大手IT企業には、独自でAI研究をしてきた歴史がある。そのためこれらの企業にも、独自の生成AIサービスを提供する動きが見られる。とはいえそれでMicrosoftやGoogleに対抗するのではなく、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceなどを企業が活用するのを支援するサービスも同時に提供する。支援サービスを実施する際には、自社で生成AIを開発してきた知見を生かし、どのようなデータを学習させればビジネスで求められるバイアスなどを効率的に取り除けるかなどのノウハウが1つの強みとなる。

 ChatGPTが一気に市場で拡大したこともあり、日本のSI企業などでもまずはOpenAIを顧客企業が利用できるようにするところからアプローチしている。とはいえMicrosoftやOpenAIだけに拘るのではなく、Google CloudのVertex AIなども適宜選択できるようにするオープンなアプローチをとるところが多い。現状ではOpenAIが市場をリードしているが、今後のビジネス展開の先行きはまだ不透明。なので、どの技術が台頭してもそれに対応できるようにしているのだろう。

 既に市場には、大規模言語モデル(LLM)を使ったサービスを展開するスタートアップ企業がたくさんある。そして有望企業の買収も始まっている。Databricksは、2023年6月にLLM開発の「MosaicML」を13億ドルで買収することを発表している。SnowflakeApplicaの「Document AI」を同社のプラットフォームと統合することを明らかにしており、5月には検索エンジンにLLMを組み込んだソリューションを展開する「Neeva」の買収も発表している。

 Oracleは、カナダのトロントのスタートアップ企業「Cohere」と連携する。Cohereの技術を取り込み、生成AIのクラウドサービスをOCIで展開する。CohereにはOracle、NVIDIA、Salesforce Venturesなどが投資していることもあり、注目の生成AIベンチャー企業の1つとなっている。シスコシステムズは5月に、セキュリティ領域でLLMを活用する「Armorblox」を買収すると明らかにした。他にも画像生成AIなどさまざまな領域の生成AIが買収されており、今後さらにこの動きは加速しそうだ。

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強力なデータベースと生成AIを組み合わせるのは必然

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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