セブン-イレブン:効率化を高めるTerraform CloudとVault Enterprise
花尾氏の講演後は、セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)の執行役員 システム本部長である西村出氏が登壇。セブン-イレブンは、全国の店舗数が約2万1000店、1店舗あたりの平均来客数は1日で約900人、おにぎりの年間販売総数は約20億個と、人々の毎日を支えている。このセブン-イレブンの店舗経営を30ヵ所の本部と地区事務所、全国各地に広がる製造工場や共配センター、約3,000人のOFC(オペレーション フィールド カウンセラー)が相互に連携する形で、IT・DXを活用し、同社のシステムインフラを支えている。
歴史を顧みると、SEJではかなり古くから情報ネットワークシステムへの投資を継続している。しかし2000年を過ぎたころに世界におけるITテクノロジーが急伸し、相対的にSEJシステムはレガシーとなり、世間のIT進歩と乖離が広がるようになった。2019年に着任した西村氏は当時の状況を述懐し「何とか現代のITレベルに持ち上げていかなくては」と強く感じたという。現在では様々なパートナーとの共創でクラウド・AIを使いこなし、飛躍的進化を目指す過程にある。
西村氏はSEJにおけるDX推進を3段構えで考えている。第1の戦略はデータ利活用推進によるDXだ。まずは地盤固めということで、データの利活用で主導権を握れるようにデータ基盤を構築する。第2の戦略は、便利なものはどんどん活用するということでSaaS・AI積極活用によるDX。第3の戦略は、基幹システム再構築によるDXだ。レガシーシステムをパブリッククラウドのフルマネージドサービスを駆使して再構築する。
象徴的なのがセブンセントラルと呼ばれるリアルタイムデータ基盤だ。POSデータを中心としたSEJのデータを、パブリッククラウド(Google Cloud)で一元管理して、顧客や加盟店が使うシステムへと流していく。当初西村氏は「データを端から端まで1時間程度で渡せれば」と考えていたが、システムを磨きあげることで現在では約1分台でデータを渡せるようになっているという。
採用しているテクノロジーには、大規模データの高速処理にGoogle CloudのBig QueryやCloud Spanner、API連携にマイクロサービス化による認証認可を一本化やApigeeでAPI統合管理などがある。Google Cloudをフル活用しているため、Google Cloud Customer Awardsで表彰されたこともあるほどだ。現在では生成系AIとの組み合わせによる業務改革を目指し、実証実験を準備している。
クラウド活用を前提とすると開発体制も変えていく必要がある。かつてのオンプレ・密結合・ウォーターフォール・アウトソーシングといったことから、これからはクラウド・疎結合・アジャイル・内製化へとシフトする。そのなかではシステム本部とパートナーが協力できるように共通の方針を共有することや、最新技術を活用するために専門知識を持つ外部もうまく混ぜてバランスを取ることなどを意識しているという。
開発や検証においては、環境構築の自動化(プロビジョニング)にTerraform Cloud、認証情報管理(シークレット管理)にVault Enterprise、開発プラットフォームにGitHubなどを採用している。個別最適と連携を重視したグローバルスタンダードなツールの選定で、生産性向上とガバナンスを両立させている。
中でもTerraform Cloudは、インフラ情報をSEJが一元管理することによるガバナンスを強化とIaCの自動化でインフラ業務の効率化をすることが目的となっている。同様にVault Enterpriseは、シークレット情報の集約でセキュリティリスクの極小化と情報の一元化による管理業務効率化が目的となる。
西村氏は「常に新しい体験価値を提供するには、パブリッククラウドやAIを中心とした新技術の積極活用が欠かせません。こうした最適な技術、ツール、ソリューションを生かして、我々のミッション実現のためにスピードとガバナンスを両立させながら、チャレンジを続けていきたいと思います。IT・DXで貢献しながら、明日の笑顔を共に創っていきたい」と思いを語った。
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