経営層と情報システム部門──Salesforceへの期待とギャップ
LIFULLは不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」などを運営する企業。不動産会社から広告として物件情報を掲載し、家を探している人とマッチングさせる事業を行っている。そのため、直接の顧客は不動産会社だ。同社 テクノロジー本部 コーポレートエンジニアリングユニット ユニット長の籔田氏は、技術マネージャーとしてLIFULL HOME'Sの商品開発に深く関与してきた。2015年にSalesforce(旧Community Cloud。現Experience Cloud)を活用して顧客向けのポータルサイトを立ち上げ、これにオンライン受注システムを構築。現在は情報システム部門の責任者として全社的な業務改善に取り組んでいる。
同社がSalesforceを利用した当初の理由はコスト削減だった。顧客管理と売上管理のためにSalesforceを導入する会社は多く、ユーザー数が少ないうちはライセンス料も安価であるため手軽に利用を始められる。一方で、どの部門でも導入しやすい機能性から社内でSalesforceを使う組織が増えていくと、ライセンスが乱立してしまう企業も少なくない。実は、LIFULLも同様の課題に直面していた。徐々にデータ構造が混沌としていくと、顧客情報の重複が生じたり、情報の共有が適切に行われずライセンスが重複したりと、そもそもの設計方針も定まらない状態に。そこで籔田氏に白羽の矢が立つことになる。
Salesforceの担当者と共に効率的に利用するための戦略を策定し、現場が求めるレポートやダッシュボードを徹底的に提供していく。現場の満足度は上がっていく一方で、上層部から求められたのは売上への貢献だ。籔田氏は「経営層が望んでいることは売上・利益への貢献である一方で、我々に課せられた当初の役割は効率化でした。つまり、ギャップが生まれており、これを理解した上で取り組みを進めなければ不幸になってしまいます。そこで、売上や利益への貢献を明確にするための戦略を考えました」と振り返る。