ユナイテッドアローズは“ユーザー重視”のデータ基盤構築へ
ユナイテッドアローズが中期経営計画の中で掲げているデジタル戦略の1つに、OMO(Online Merges with Offline)戦略の強化がある。コロナ禍を経て、同様の取り組みを進める企業も多い中、同社が着手したのがデータ基盤の構築だ。
従来からデジタルマーケティングの部隊を主として、DWH(データウェアハウス)の構築を進めていた一方、利用したいデータを思うように使えないという課題に直面していた。必要なデータがあれば、その都度IT部門に依頼するも、IT部門は日々のシステム運用などで人手が足りておらず、即座に反映されないなどの悩みは多くの企業で見受けられる。同社 ITソリューション本部 ITビジネスソリューション部 シニアマネージャー兼EC開発部 中井秀氏は「私はデジタルマーケティングを担当した後に、IT部門に今所属しています。だからこそ、IT部門の責任範囲の大きさや管理への苦労などはよくわかります。一方で、マーケティングを担当していた頃、自身でDWHを構築したときに素早く施策を講じられた経験もあり、お互いがハッピーになれるようなやり方はないかと考えていました」と話す。
そこで中井氏が目指したのは、「データの民主化」を実現すること。社内のさまざまな利用者が容易にアクセスできるようなデータ基盤を構築し、蓄積されたデータを容易に加工・外部連携、可視化することで、必要な施策を素早く実行できるような世界を目指した。
とはいえ、思い描いたようなデータ基盤を構築することは容易ではない。自社だけで構築できるノウハウやスキルを蓄積している企業は少なく、IT部門だけで完結する話でもないためステークホルダーが多くなるだけでなく、相応の予算も必要だろう。ユナイテッドアローズでは、既にデータ分析のためにDWHを構築・運用していたものの自由度は低く、IT統制が強いためデジタルマーケティングやEC担当者にとっては使いにくいものだったという。「ユーザーからすると分析以外の用途が想定されておらず、外部アクセスもできませんでした。また、DWHそのものの規模が大きく、当社にとってはオーバースペックな環境とも言えました」と中井氏。大量のデータを蓄積し、専門家が分析するだけの環境では、前挙したOMOなどの新たなマーケティング、EC施策には寄与しにくい。
そこで、データ基盤構築にあたって重要視したのは、ユーザーに権限を委譲することで“良いバランス”を模索すること。セキュリティ統制をとった上で、ユーザーに権限を付与し、外部データ連携ツールとしてtroccoを導入。各部門が自由に使えるような形を作っていった。中井氏は「IT部門がすべてを負担せず、ユーザー部門には自由に使うからこそ、その責任を負ってもらう形にしました。また、クラウド上でのDWH構築により、運用を含めるとコスト効率が上がっています」と説明する。