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業務改革の究極の形は「その業務をやめること」

 丸亀製麺やKona's Coffeeをはじめとした飲食業を展開するトリドールホールディングス。同社は2019年12月に策定した「ITロードマップ」を基に、“真のグローバルフードカンパニー”になるための基盤作りを着々と進めてきた。当初の計画の終わりが見えてきた中、CIOとともに取り組みをけん引した同社 BT本部 DX推進室室長 海老宏知氏に、これまでの業務改革への思いと今後の展望を訊いた。

たった3ヵ月で作り上げた「ITロードマップ」

──初めにこれまでのご経歴と現在の業務内容を教えてください。

 新卒で入社したのはアパレル業界の会社でした。その後、リテールビジネスの会社を経て、トリドールホールディングスには2018年4月に入社しました。新卒以来、一貫して事業会社の情報システム部門でキャリアを積んでいます。情報システム部の仕事は、システムの入れ替えや業務改革を通して社内を俯瞰的に見られるところがおもしろいですね。

 現在はDX推進室の室長として、主に社内で展開しているプロジェクトの統括を行っています。DX推進室のメンバーは現在7人いるのですが、それぞれ得意領域が異なるので、各メンバーがプロジェクトマネージャーを務める個々のプロジェクトの進捗管理をしつつ、自分もプロジェクトマネージャーとして、いくつかプロジェクトを担当しています。

──DX推進室はいつごろ発足し、これまでどのような取り組みをしてきたのでしょうか。

 元々トリドールホールディングスには「IT部」という、いわゆる情報システム部門があり、2019年9月に執行役員 CIOとして磯村康典が着任してから「IT本部」へと名称を変えました。その後、業務改革を行っていく部署として「BT本部」へ改組。新たなスタートを切ったタイミングで、同本部の下に「DX推進室」が発足しました。本格的にDXの取り組みを始めたのは2020年1月からですね。業務改革の進め方の全体指針を示すため、2019年9月から12月までの3ヵ月で「ITロードマップ」を作りました。

トリドールホールディングス BT本部 DX推進室室長 海老宏知氏

──3ヵ月となると、あまり時間的余裕はありませんね。

 やったことは大きく2つです。1つは社内ヒアリング。現場の責任者と事業会社の幹部クラスを対象に、既存の業務システムに対する聞き取りを行いました。もう1つが財務諸表の確認。ITコストの棚卸しを行い、それぞれにどのくらいのコストがかかっているのかを把握しました。この2つを行った結果、その時点での情報システムを取り巻く実態について、社員の気持ちとIT投資の総額が明らかになったのです。

 続いて、オンプレミス環境が中心だった業務システムを機能ごとに分解し、すべてをSaaSに入れ替える方針を定めました。SaaSベンダーから見積もりを集め、導入にかかるコストと導入後の運用コストを明確にしていきました。

ピーク時には30超のプロジェクトを同時進行

──プロジェクトのゴールはどのように描いていましたか。

 社内ヒアリングで聞こえてきたのは既存システムへの不満ばかりで、現状に満足している人はほとんどいませんでした。これまでのシステムは自分たちの使いやすいようにカスタマイズを繰り返していった結果、時代の変化に適した形でシステムを改修したいと思っても、追随コストが大きくなってしまう状態だったのです。このやり方をリセットし、カスタマイズをしなくてもいいようにSaaSを中心に業務を組み立てようと方針を決めました。

──SaaS中心に方針を変更したと同時に、バックオフィス業務のBPOへの移行も実行したと聞きました。これにはどのような背景があったのでしょうか。

 元々、持株会社からシェアードサービス会社をつくり、経理財務や人事給与、IT運用、コンタクトセンター、店舗事務支援などのルーティン業務をシェアードサービス会社においていました。このシェアードサービス会社のルーティン業務を、BPOベンダーへ移管していったのです。定型化されたバックオフィス業務をいくら社内で頑張ったとしても、実際にお店に来ていただけるお客様の価値には必ずしも結び付きません。そのため、業務プロセスを見直し、すべてのバックオフィス業務のBPO移管をシステムの入れ替えと同時並行で進めていきました。

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究極の業務改革は「その業務をやめること」

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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