生成AI導入に向け、PoC実施に着手
──はじめに、セッカキ様のこれまでのご経歴、および現在御社で取り組んでいることや役割を教えてください。
Kyndrylに入社する前は、CMA CGMという海運会社でCIOやチーフデータオフィサー、セキュリティ関連の業務を担当していました。また、IBMフランスのCEOとしての経験もあります。
Kyndrylはデジタル化を支援するインフラストラクチャーの提供で知られていますが、最近ではお客様からアプリケーションやインフラストラクチャーに関する多様な要望が寄せられています。そのため私は、SAPやオラクルへの対応を含め、アプリケーション構築に注力しています。データ&AI領域では、データ基盤の強化を支援しています。データ基盤を確立しなければ、生成AIがうまく機能しないからです。
──2023年は生成AI一色だったと言っても過言ではありません。2024年は生成AIを実装していく段階に入っていくと考えています。改めて、グローバルにおける企業の生成AIの利活用状況を教えてください。
2023年は生成AIが非常に注目されましたね。これは生成AIが持つ莫大な潜在力と、私たちの働き方や生産性に根本的な変化をもたらす可能性、アクセスできなかった知識へのアクセスを可能にすること、そしてクリエイティブな分野における顕著な影響によるものです。生成AIにより、以前は容易に作れなかったコンテンツが簡単に作成できるようになりました。
お客様のAIに対するニーズも変化しています。最初は「AIで何ができるのか」という興味から始まり、次の段階では「パイロットで試してみたい」「PoC(実証実験)を実施したい」となります。現在ボリュームが多いのは、PoCの実施段階です。ここでは適切なユースケースとビジネスモデルの検討が必要となります。
その一歩先を行く段階では、ツール導入や日常業務への応用に関する相談が増えてきました。さらに進んだお客様からは「生成AIをどうやって大規模に利用するか」「データをどのように整理すればいいか」といった、生成AIの効率的な使用に必要なデータの質や整理方法について相談されるようになっています。
──グローバルにおける先進的な利用事例を教えてください。
業界によって状況は異なりますが、特に広告制作企業では、生成AIを活用してプロジェクトを迅速に進められるようになっています。クライアントへの提案が早期に実現するため、生成AIを採用しなければむしろリスクが増大し、ビジネスモデルを再考する必要が出てきます。この変化は速く、他の業界よりも先行していると感じています。
これまでAIは、あらかじめ用意した回答を質問に紐付ける形で活用されてきました。最初はシンプルな使い方から始まり、チャットボットなどのナレッジ提供ツールへの進化が見られます。
たとえば、シンガポールの海運関連のお客様に提供したシステムでは、ERPやSAP、オラクルからの情報取得を生成AIによって自動化しました。これにより、手動でデータベースにアクセスして情報を調べる必要があった作業を合理化し、顧客体験が向上しました。
メインフレームなどレガシーシステムを扱う際には、不足しているドキュメントを生成AIで再作成する試みもあります。これはシステムのモダナイゼーションを進める上で大きな時間節約になります。他にもCOBOLで書かれたプログラムをJavaなどの言語に書き換える作業にも生成AIが活用されていますね。