多様なAIエージェントの登場、その厳密な管理が求められる
AIエージェントとは、人間が設定した目標に基づき、自ら必要なデータを収集し、それらを基に必要な判断を下し、タスクを遂行するシステムだ。従来のAIでは対応が難しかったような複雑なタスクをAIが自律的に実行する。人間の介入を最小限に抑え、自ら意思決定を行う“自律性”、センサーやデータ分析などを通じて周囲の状況を把握し、適切なアクションを選択する“環境認識”が特長だ。状況の変化にも対応し、最適な手段で目標達成に向けた行動を取ることができる。
生成AIがコンテンツなどの生成に特化しているのに対し、AIエージェントは目標達成のためにタスクを実行することがターゲットだ。生成AIに続く、AI技術の新たな活用領域としてAIエージェントは今、急速に市場の注目を集めている。
たとえばSalesforceは、業務を効率化するためのAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」をいち早く提供し、主にCRMを利用する際のさまざまなタスクやプロセスを自動化した。Microsoftは「Microsoft Copilot」を提供し、データ入力やスケジューリング、レポート作成など、従業員が行う反復的なタスクをAIエージェントで自動化。Copilot Studioを使用すれば、ローコードで独自のAIエージェントの作成も可能だ。
ChatGPT登場以来、多くのベンダーが自社ソリューションに生成AI機能を取り入れてきた。加えて最近は、AIエージェントに関連する機能やサービスを搭載するベンダーが一気に増えている。かなり高度なタスクを柔軟に自動実行しようとするものもあれば、RPAの「プロセスの自動化」に生成AI技術などを組み合わせた比較的カジュアルなものまで、AIエージェントは玉石混交だ。
今後AIエージェントの導入が進めば、多様化するエージェントのセキュリティ、コンプライアンス対応、コスト管理などが企業にとって深刻化するだろう。これらの課題に対し、人事、財務のエンタープライズプラットフォームを提供するWorkdayは、2025年2月11日、新たに「Agent System of Record」を発表した。
これは、AIエージェントの一元的な管理を実現するためのもので、Workdayおよびサードパーティーが提供するものを含む“AIエージェントの統合的な管理”を可能にする。AIエージェントを活用する際のガバナンスやセキュリティの確保、業務の最適化などを支援するものだ。
またWorkdayでは、新たにロールベースのAIエージェントも提供している。これは自律性と設定可能なスキルセットを備え、従来のタスクベース型エージェントとは異なる特長を持つ。WorkdayのAIエージェントは、給与管理や契約管理、会計監査など、WorkdayのSaaSで実行する多岐にわたる業務プロセスを効率化し、企業業務の生産性向上に寄与する。Agent System of Recordは、このロールベースのAIエージェントと人の双方を統合的に管理し、運用効率やセキュリティ面での課題解決を図る。