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週刊DBオンライン 谷川耕一

「信頼性こそがNo.1バリュー」セールスフォース最高信頼責任者が、生成AIのトラスト向上への決意を語る

セールスフォース 最高信頼責任者(CTrO) 上級副社長 ブラッド・アーキン氏

 膨大な顧客データを扱うSalesforceにとって、データやサービスの信頼性をいかに確保するかは、企業の生命線ともいえる最重要課題だ。では、実際にどのような取り組みを行っているのか。2024年1月に、米国Salesforceのチーフ・トラスト・オフィサー(CTrO/最高信頼責任者)に就任したブラッド・アーキン(Brad Arkin)氏に話を聞いた。Salesforceのソリューションでも活用されている生成AIでは、データの偏りなどにより回答に偏見や嘘が含まれることが懸念されている。このようなAI活用における信頼性の担保についても、同社の取り組みを訊ねた。

透明性とコミュニケーションで信頼性を確保する

 信頼性の確保においては、透明性とコミュニケーションが鍵となる。アーキン氏はSalesforceに入社してからの約半年で、同社が信頼性の課題に対しどのように取り組んでいるかを深く理解した。

 顧客やパートナーとの信頼関係を構築する活動は、アーキン氏がCTrOとして率いるチームが中心となって推進している。とはいえ、このチームだけでSalesforceの信頼性が高いレベルで維持できるわけではない。様々な組織のメンバーと密接に連携してプロジェクトやプログラムを展開しており、それらを通じ信頼性向上の取り組みを強化している。

 Salesforceの社内では、多くのサービスや機能開発のプロジェクトが進められており、それらが信頼性の向上に寄与していることは間違いない。様々な取り組みがある中で、「もっとも信頼性の向上を支える要素は、“透明性”の確保です。そしてもう一つは、顧客や規制当局、政府機関などといった外部ステークホルダーとのクリアなコミュニケーションです」とアーキン氏は説明する。

Salesforce Chief Trust Officer(最高信頼責任者) 上級副社長ブラッド・アーキン氏
Salesforce Chief Trust Officer(最高信頼責任者) 上級副社長
ブラッド・アーキン氏

 そのために、まずは顧客との信頼性を醸成すべく業界標準に準拠し、セキュリティなどの各種証明や認定を取得することを重視している。規制やルールは日本、米国など国や地域により異なるので、幅広く対応する必要があると同氏は述べる。

 また、自然災害などサービス中断につながるような何らかのトラブルが発生した際に、どのような仕組み、体制でそれに対処するのか。その技術的な中身を明らかにすることを重視する顧客も多い。その要求に応えるためには、顧客との密なコミュニケーションをとる必要がある。

 アーキン氏が率いるチームは、主にセキュリティと信頼性の向上を専門に手がけている。チームにはエンタープライズセキュリティの担当部隊がおり、Salesforceの社員が製品開発などで様々な技術やツールを使う際、きちんとセキュリティが保たれているかなどを確認、支援している。

 もちろん、外部からの攻撃などに対する検知や対処を担うメンバーもいる。Salesforceのシステムを常に監視し、インシデントの兆しがあればその芽を早期に摘むことで、小さな問題を大きなトラブルへと発展させないようにしているのである。これらに加え、コンプライアンスの確保にも取り組んでいる。これについては、開発の活動や成果物に対しセキュリティの観点から基準などがしっかり守られているかをチェックしている。

 次に、コミュニケーション担当の部隊。彼ら彼女らの主な業務は、情報を外部に共有することだ。また、外部からの問い合わせやフィードバックを内部に伝える橋渡し役も担っている。さらには、物理的なセキュリティ、安全性を確保する部隊もある。これら複数の信頼性に関わる業務の担当者でチームが構成されており、それをリードするのがアーキン氏なのだ。

 加えてアーキン氏は、SalesforceのGovernment Cloudを紹介した。これは、政府やそれに関連する顧客向けの専用のクラウドで、エアギャップを設けて一切外部のネットワークにつながっていない環境を用意したものだ。このGovernment Cloudの安全性を担保する役割も、アーキン氏のチームが担っている。

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生成AIの「ハルシネーション」の懸念にどう応えるか

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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